エジプト沖での船の転覆事件の生存者が、ライフジャケットの争奪について語る

500人ほどの密航者でいっぱいのトロール漁船が転覆し、少なくとも202人の命を奪った事件の生存者が、UNHCRのインタビューに答え、恐怖の体験を語りました

公開日 : 2016-10-13

熾烈なライフジャケット争奪

アレクサンドリア(エジプト)、2016年9月30日 ― 9月下旬にエジプト沖で、何百人もの人でいっぱいのトロール漁船が転覆し沈んだとき、ソマリ・アブシロ*は突如、自身が水の中にいて、おぼれかけた人々が彼女のライフジャケットにつかみかかっていることに気づきました。

 
「私は水の中で生死をかけて戦っていましたが、それは私が泳ぎ方を知らなかったからではなく、人々が私のライフジャケットを奪おうとしてきたからです。手も噛まれました」とアブシロはUNHCRが行ったこの悲劇に関するインタビューに答えました。

事件の経緯

無慈悲な密航業者によって500人ほどが詰め込まれたトロール船は、エジプトからイタリアに向かって出発したところ、9月21日にエジプトのロゼッタ沖で転覆し沈みました。21歳のアブシロは、エジプト人、スーダン人、エリトリア人、エチオピア人、シリア人を含む164人の生存者のうちの1人です。

 
これまでに202人の遺体が海から引き上げられました。33人の遺体は沈んだ船自体から発見され、その中には水でいっぱいの船の中に閉じ込められ、沈んだとみられる2人の子どもと女性もいます。

 
エジプトは難民庇護の長い歴史を持つと同時に、海路でヨーロッパへ向かう不法移民の出発地でもあります。

 
生存者に話を聞くと、混み合った船がどのようにゆれはじめ、人々が不安を感じるようになったかを数人が説明してくれました。喧嘩がはじまり、やがて船が転覆し、何百人という男性、女性、子どもがライフジャケットなしで海に落ち、泳げずにいました。

「多くの人々がライフジャケットを持っていませんでした。人々は浮かんでいようとしてお互いを引っ張り合っていました」

「いくつもの遺体を忘れることはできません。私は浮いているために、1人の遺体にしがみついていました」とスーダンのダルフールからやってきて、ヨーロッパに渡る4度目の挑戦中に船が沈没した35歳の弁護士アチャン*は言いました。

 
「多くの人々がライフジャケットを持っておらず、水の中で奪い合いが繰り広げられました。人々は浮かんでいようとしてお互いを引っ張りあっていました。これが全体の状況をより悪化させていました」と彼女は思い出しながら語りました。

 
船が傾くにつれて、乗組員と乗船者は警察と海軍を呼びはじめ、遭難信号を送った、と生存者は言いました。閉じ込められている人々がいる一方で、海に飛び込み泳いで船を離れられた人もいました。

 
「私はライフジャケットを着ていたにも関わらず、泳ぐことができませんでした」と、生き延びるために水中で他の人にしがみついていた、33歳のエリトリア人のアブリエット*は語りました。

増え続ける違法出国者

2014年以来、不法な方法でエジプトから脱出し、失敗した難民と移民が確実に増えている、とUNHCRは報告しています。生存者の中には、この悲劇が起きる前にもヨーロッパに行こうとして失敗したことがある、と言った人もいます。

 
2016年9月末までにの9か月間に地中海を渡った人数は、2015年9月末までと比較して42%低くなっていますが、同じ期間に報道された死者や行方不明者の数(3,498人)は依然として多いままです。

 
先の重大な船の沈没事件を受け、エジプト政府は船の乗組員のうち最低でも4人を逮捕しました。彼らは拘留されており、人身取引や不法死亡により告訴されるかもしれません。

「エジプト人の男性が…彼の末の息子の遺体を見つけました。彼は遺体にキスをし、水の中にそっと戻していました」

命がけの取引を目の当たりにした生存者たちは、どのように密航業者に密航の代金である1,000米ドルから1,700米ドルを支払ったかを話してくれました。彼らは会う場所を指定され、ミニバスに乗せられて倉庫に連れていかれ、夜中に小さな釣り船で船舶に入りました。

 
船に乗船した人の大多数はエジプト人でした。生存者によればアフリカ国籍の人々が約100人下のデッキにある2つの部屋にいて、女性と子どもは真ん中と上のデッキにあるその他3つの部屋にいました。

UNHCRの支援

悲劇が起きた結果、UNHCRとパートナー機関は、外国人43人の生存者の状況と必要な支援を査定し、人道支援をするために即座に対応しました。援助には、生存者が目撃した恐怖を乗り越えるための医学的な配慮と、特に必要な心理的・社会的ケアも含まれています。

 

「エジプト人男性が暗い中で子どもの名前を呼んでいました。そして、一番年下の息子の遺体を見つけました。彼は息子の遺体にキスをし、そっと水の中に戻していました」と、ソマリア人生存者のアミル*は目に涙をためながら話しました。彼は見るからに動揺しており、彼が経験してきたすべてのことに腹を立てているようでした。

 

エジプト政府は5,000人近い外国籍の人々を北海岸からの不法出国の疑いで逮捕しており、UNHCRエジプト事務所が庇護申請者や難民として登録した人々を解放するという政策を遂行しています。
UNHCRは抑留者の登録状況を当局に確認し、彼らを即座に開放するように提言すると同時に、彼らが拘留されている間の支援も続けています。

 
UNHCRは抑留者がおかれている状況、特に不法出国に対して強まる政府の精査をよく監視し、UNHCRが援助対象とするすべての人々の保護のための提言を続けています。

 
*すべての人名は個人情報保護のため変更されています

 
Nora Ibrahim

 
原文はこちら(英文)
Survivors tell of fights over lifejackets as boat flipped off Egypt

 

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