存在することによる保護(Protection by Presence)

公開日 : 2015-10-20

ハナ・ザバラウィは、彼女自身が難民でしたが、今では別の立場にいます。どしゃぶりの雨の中で、ハナは全く未来が見えない人々に希望を与えています。

クロアチア 2015年10月19日 ― ハナ・ザバラウィは、彼女自身が難民でしたが、今では別の立場にいます。どしゃぶりの雨の中で、ハナは全く未来が見えない人々に希望を与えています。
時には、ただそこにいるだけで十分なのです。それを人は「存在することによる保護(Protection by Presence)」と呼びます。アラビア語やファルシ語の話し手が、UNHCRの青を身にまとい、長く不確かな欧州の旅路を行く難民にひと時の安心を与えています。

UNHCR保護官のハナ(右側)が、同僚のディアナと国境のフェンスを挟んで話している。セルビアからクロアチアのバプスカに到着する新たな難民のグループを待っている

ひどい雨の中、各グループがセルビアからクロアチアへと渡るのを待っている時、彼らは離れ離れになった家族の再会を助け、最も弱い人々に必要な支援を与えています。人々の様子を聞き、ジョークを言ったり、旅路の話や心配、希望に耳を傾けています。

さらに、彼らは情報を提供します。多くの戦争から逃れて来た人々にとって、新しい土地では情報は不可欠です。携帯電話の通話範囲を離れて、そのバッテリーも切れてしまった時、聞き覚えのある言葉は難民にとっての命綱です。それが、今は安全な場所にいて、必要なことに対応してもらえるシステムがあることを意味するのです。

ハナ・ザバラウィは、彼女自身が難民であり、最初の湾岸戦争の頃、クウェートに住んでいたパレスチナ系シリア人で、イラクの戦車侵入後に避難しました。彼女に家と教育を与えてくれたのはシリアであり、ダマスカスにいる家族に会うために年に数回帰る場所もシリアです。「私もそこにいました。彼らの気持ち、不安と恐れがわかります」と彼女は言います。

しかし今では、彼女は別の立場にいます。UNHCR保護官として、青のポンチョをまとい、保温下着を着て、8時間シフト(この日は午後4時から真夜中まで)で、全く未来が見えない人々に希望を与えています。

シリアのダラアから来た新婚夫婦、アラア(左側)とモハマッド(右側)は、オパトヴァク一時滞在センターへ運んでくれるバスを待っている

ここは、クロアチア政府の指揮下にあり、国連は政府による対応を支援しています。赤十字が家族再会を主導し、ヨーロッパ中から集まったボランティアのチームが、歓迎し、服やマクルーベ(中東のシチュー)を配っています。

しかし、最も役に立っているのは、継続していることです。「彼らは、我々を見捨てないでと言います。UNHCRはギリシャで迎え、国境で見守り、道中ずっとそこにいてくれた、と。」

国境のゲートが開き、新たな難民の行列がぴちゃぴちゃと音を立てて通り過ぎます。彼らの靴はUNHCRのビニール袋に覆われ、道路際のスイスの一団から差し出されるお茶の入ったコップをつかんで行きます。
 
彼らは雨など気にしていないように見えます。「水は良いものです」とセルガヤ出身のタハ・マルードは言います。「気になりません。戦争から逃げて来たんです。雨なんてどうってことありません。シリアの気候もほぼ同じです。」

国連職員、警察、赤十字のボランティアも、めまぐるしく変化する天候にさらされています。それでもハナは問題ないと言っています。「絶好調です。特に今日は、きちんと備えて来たので。買い物に行って、保温レギンスを買ってきました。全然違いますね。」

 

難民のある一団は、UNHCRテントで雨よけしながら、クロアチアのバプスカに到着する

Mark Turner

原文はこちら(英文)

Protection by Presence

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