From the Field ~難民支援の現場から With You No. 33 ~ / UNHCR駐日事務所 副代表 小尾尚子

公開日 : 2015-06-05

UNHCR駐日事務所
副代表
小尾尚子 (おび なおこ)

日本に来た難民の保護・支援

小尾尚子副代表

私は現在、東京の駐日事務所の法務部で、日本に来た難民の保護・支援を統括し、難民に関する法律・政策への提言・研修活動を行うほか、市民団体と連携して難民の日本社会におけるより良い統合にむけての活動を行っています。
「日本にも難民がいます」とお話しすると「どこに難民キャンプがあるのですか?」と驚かれたりするのですが、実は日本にも多くの難民の方がいらっしゃいます。
70年代から90年代にかけて、インドシナ半島から日本に逃がれてきた、当時「ボートピープル」と呼ばれた難民の方たちや、迫害から逃れて日本にやってきて、日本政府の難民認定審査を経て保護されている方たち、そして第三国定住*事業の枠組みで日本にやってくる難民の方たちなどです。
*第三国定住:難民問題の解決策の一つで、祖国に帰ることも避難先の国に定住もできず、一時的に庇護を求めた国においてもなお生命、自由、安全、健康などの基本的権利が脅かされている難民を別の国(第三国)が受け入れるという仕組み

日本の「第三国定住」プログラムによる難民の受け入れ

難民から話を聞く小尾副代表
第三国定住で鈴鹿市が受け入れたミャンマー難民から話を聞く(中央)

日本では、2010年に難民の第三国定住の試験的受け入れが始まり、ミャンマー難民を年間30人という枠で受け入れてきました。2015年からは正式なプログラムとして継続が決定しています。世界でおよそ100万人の難民が第三国定住を必要としているといわれていますが、日本政府がアジア地域で初めてとなるこのプログラムを開始したことは、とても大きな貢献であるといえます。 これまではミャンマー難民に限られてきましたが、将来的には、危機に瀕する女性や子ども、医療ニーズの高い難民、家族の呼び寄せなど、保護のニーズの高い難民の受け入れに柔軟に対応可能なプログラムに発展してほしいと願っています。

日本におけるシリア難民の状況

例えば、シリアでは紛争が勃発して5年目に入り、400万人以上が国外に逃れる中、近隣諸国での受け入れは限界に達しています。そのため、グテーレス国連難民高等弁務官は国際社会に対し、第三国定住や人道的枠組みによるシリア難民の受け入れを要請しました。
日本にも実は、シリアから逃れてきた方が住んでいらっしゃいます。中にはもともと留学生として日本に来た人やビジネスに従事するために日本にいらした方々もいますが、彼らの多くが帰国できない状況にあります。こうした人々の中からは、「離ればなれになっている家族を日本に呼び寄せたい」という切実な声が上がっています。いつ爆撃を受けるか分からないという緊迫した状況に家族は置かれているわけですから、その気持ちは良くわかります。シリアから日本へ子どもを連れてきた方に話を聞くと、平和な暮らしをしている今も、子どもたちは花火の音を聞くと爆撃を思い出して泣くと言います。それほどシリアの人々は心の傷を抱えています。日本政府とは、シリアや周辺国に住む家族の呼び寄せが実現できるよう、話し合いを続けています。

難民を支援するために、日本に住む私たちができること

小尾副代表

「難民支援」とは、政府や国連機関だけが行うものではなく、一般の人にも果たせる役割があります。企業であればインターンシップでの難民の受け入れ、教育機関による難民への奨学金制度、医療機関では医療が必要な人への手術やリハビリの提供などです。
教育でいうと、近年専門学校で学びたいというニーズが高まっていて、専門的なことを学んで手に職をつけ、就職につなげたいという声を多く聞きます。現在、UNHCRと提携する3つの大学で難民を対象にした奨学金プログラムがありますが、将来、専門学校にもそうしたプログラムを提供いただければと思います。
また、「J-Funユース」という難民を支援する学生団体の皆さんには、難民の子どもたちに学習支援をしていただいており、成績の向上につながっています。団体の学生さんからは、「最初は自分たちが支援するつもりで始めたのに、子どもたちから学ぶことのほうが多かった」という感想をいただくなど、相互の学びにつながっていることをうれしく思っています。
社会で難民を受け入れるということは、多様な文化を学ぶことであると同時に、将来的に双方の国の架け橋となる人材を生み出し、互いの国の発展にもつながります。(支援者の)皆様には、ぜひ日本にいる難民についても知っていただき、情報を周りの人に共有・発信したり、家庭や職場、学校などそれぞれの立場でできることから支援を始めていただければと思っています。

小尾尚子(おび なおこ)プロフィール

国際基督教大学行政学研究科(国際法・国際機構論)博士号。1987年よりUNHCRに勤務。ケニア、フィリピン、タイなどのUNHCR(地域)事務所、及びスイスジュネーブの本部で上級法務官、上級政策オフィサー、国際保護局コミュニティ開発、女性、子どもの保護、ジェンダーの平等担当課長として勤務。2012年よりUNHCR駐日事務所副代表(法務担当)。

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