アルメニアのシリア難民に生き続けるナンセンの遺産

公開日 : 2015-08-25

紛争から逃れて

ホヴィグ・アシュジャン
シリアのアレッポからの難民であるホヴィグ・アシュジャンは、2012年の秋に家族とともにアルメニアに到着した。家賃助成金のお陰で、彼らはエレバンに小さなアパートに住むことができるようになった。

エレバン、8月12日――シリアのアレッポに住んでいたホヴィグ・アシュジャンとその家族は、戦争が起こる前までは幸せに暮らしていました。彼は宝石店を営んでおり、妻タマラはシェフをしていました。16歳の娘リタは学校へ通っていました。

しかし、紛争が始まり、国が分裂すると、彼の家族を含む8万人ものアルメニア系シリア人は避難を余儀なくされました。

「私は家、仕事、車などすべてを失いました」とホヴィグは思い起こします。「私が大切にしていたものすべてが一瞬のうちに消え去りました。とても怖かったです。私たちは、祖先の土地であるアルメニア以外行くところはないと思いました。」

2012年の秋、ホヴィグと彼の家族はアルメニアに向けて出発しました。彼らの家から空港までの20分の道のりを移動するのに3時間かかりました。「後ろを振り返るのがとても恐ろしかったです」とホヴィグは言いました。「私たちはやっとの思いで爆撃から逃れました。」

彼らは安全と新たな暮らしをアルメニアで手に入れましたが、自分たちの持ち物はすべておいてきてしまいました。

「私の娘は、自分の部屋の隅に大事に置いてきた聖書とDVDがまだ無事であるという希望を大切に持っています」とホヴィグは悲しげに言いました。「娘は私たちの家が完全に破壊され、何も残っていないという事実を受け入れられないのです。」

避難先アルメニアでの生活

UNHCRは、ミッション・アルメニアやアルメニア赤十字、KASA スイス人道財団を含むパートナー組織のNGOを通してホヴィグとその家族が新しい生活を再スタート出来るように支援をしてきました。家賃助成金のおかげで、彼らはアルメニアの首都であるエレバンに小さなアパートを借りることができました。

さらにホヴィグは、職業訓練や収入創出プロジェクトと彼の技術により、アルメニアで新たな宝石のビジネスを始めることが出来ました。

「私は小さなジュエリーひとつを作るのに日夜働いていました。」彼はこう付け足しました。「私は宝石が一つも売れないのではないかととても不安でした。しかし、人々と関わる中で話を聞き、好みを知ったり値下げやオーダーメイドをしたりすることによって、人々が徐々に私の仕事に関心を持ってくれるようになりました。彼らの多くが今は私の常連客になっています。」

今では、ホヴィグの妻も新しい仕事を見つけ、娘も大学への進学が決まりました。ホヴィグの伝統的なジュエリーの一つは展示会で賞を取りました。

戦争から逃れてようやく、彼らの暮らしは再び軌道に乗ったように見えます。「私は今、少ないながらも安定した収入を得られることに誇りを持っています」とホヴィグは笑みを浮かべながら語りました。「宝石職人としての才能を与えてくれた神に感謝します。おかげで今は質素な収入を得て、娘をアルメニアで育てることが出来ます。」

UNHCRの支援

アルメニア系シリア人として、ホヴィグは、UNHCRの活動の重要性をよく知っています。彼は、フリチョフ・ナンセンの恩恵を受けてアレッポに亡命したアルメニア人の子孫です。フリチョフ・ナンセンは1915年以降レバノン、アルメニア、シリアにいた難民数千人の本国送還を成功させた人として知られています。アルメニア系の人々は、熟練工や宝石職人、実業家として有名であり、シリアの繁栄に大きく貢献しました。

ホヴィグやその他の人々の成功にも関わらず、避難を余儀なくされたシリア人にとって社会に溶け込むことは簡単ではありません。健康管理や住居の問題、高収入な仕事の欠如、過酷なビジネス環境、言語や文化の壁は、アルメニアにいるほとんどのシリア人が直面する大変な制約です。

「アルメニア系シリア人は、偉大なる友であるフルチョフ・ナンセンに恩を感じています」とホヴィグは言いました。「私たちの祖父母は、シリアでの生活を始めるためのナンセンパスポートによって何とか生き延びることができました。だから私たちは彼の名前を大事にし、祖先の土地であるアルメニアで尊厳を保った暮らしを送らなければならないのです。」

彼はこう加えます。「シリアに完全に溶け込んでいたアルメニア系シリア人も再び祖先の土地であるアルメニアに逃れなければならなくなりました。しかし、私たちシリア系アルメニア人は、様々な価値や技術を持ってきたので、アルメニアの社会や経済の発展にも貢献するでしょう。」

シリアでの紛争の勃発により、もとはアルメニア人のであったシリア人1万7000人がアルメニアに到着し、2015年7月の時点でうち1万3000人は依然として滞在しています。 彼らを支援するため、政府は帰化を簡素化し、庇護申請の手続きを早め、短期・中期・長期の居住許可証を提供しています。

さらに、UNHCRはパートナー組織であるNGO団体を通して、シリア人難民の緊急人道支援の必要性に対処すべく幅広い緊急支援や地域に溶け込むためのプロジェクトを行っています。

詳細はこちらから(英文)

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