人情、希望、そしてふるさとへの思い:レバノン南部のシリア人難民
公開日 : 2015-03-09
人情、希望、そしてふるさとへの思い:レバノン南部のシリア人難民
レバノンで迎える3度目の冬

アバーシー、レバノン、2月25日(UNHCR)――アリ*とその家族はレバノンで3度目の冬を乗り切ろうとしていますが、シリアのイドリブの町にあるふるさとへの思いは、片時も頭から離れません。「ふるさとに帰れるものなら、帰りたいです。でも、混乱が続く限り、無理な話です」と30歳のアリは、シリアでの戦闘を思い出して話しました。「私たちはレバノンの人たちに感謝しています。」
アリと妻、そして3人の子どもたちは、アリの弟のアハメド*とその家族とともに、レバノン南部チレの町に近いアバーシーの村にある平屋建てのコンクリートのシェルターで暮らしています。
猛烈な冬の雨が、丘の頂上にある彼らの家を覆うビニールシートに打ちつけても、この2つの家族は、レバノン全土に広がる120万人近い他のシリア人難民の多くに比べれば恵まれています。この家族は比較的頑丈な家に住み、家賃や仕事の面で力になってくれる地主がいます。
「この一家はまさに支援すべき人たちです」とレバノン人の地主のフィラスは言いました。彼は、この2家族からその質素な家の家賃として毎月およそ265米ドルを受け取り、来年の家賃の据え置きに応じました。この兄弟は近くの畑で働き、毎月平均330米ドルを稼いでいます。
レバノンのシリア人難民
レバノン全土のおよそ1700か所で暮らすシリア人難民の80%超が、住む家を借り、毎月平均200米ドルを支払っています。シリア人のための公式な難民キャンプはありません。
ほとんどの難民はアパートを借りていますが、彼らの脆弱性がますます深刻化する中、彼らは最終手段として、未完成の建物や車庫、使われていない小屋、仕事場、非公式な居住地のテントで生活せざるを得なくなってきました。建物の修復は、本格的な修復の許可が政府や地主から下りないため、たいていは一時しのぎにすぎません。
アリとアハメド、そしてその家族は、レバノン南部に暮らす14万人近いシリア人難民の一部ですが、難民の大半はベカー渓谷東部(41万2000人)、ベイルートとその周辺(33万9000人)、そして北部地域(28万5000人)に分散しています。
レバノンでの冬季支援
UNHCRの最新のアセスメントでは、シリアからの難民の半数超が標準以下のシェルターに住み、このことが、雪や雨、洪水によって苦難が増す冬場にはとりわけ対応を迫られる課題であることが明らかになりました。
2015年は、UNHCRと事業実施パートナーがレバノンのシリア人難民に冬季支援を行って4年目になります。これは大規模な事業で、資金調達や輸送に関する数え切れない課題はあっても、評価されたニーズを1つでも多く満たすことができるように、数か月前に計画や予算立案に着手します。
冬の月ごとの支援は11月から行われています。これには、最も弱い立場に置かれている家族が暖房用燃料を購入する手助けをしたり、ストーブや毛布、防水キットなどの、人々が暖かく、濡れずに過ごすのに欠かせない必需品を支給したりといったことが含まれます。
関係機関合同の支援事業
レバノンの各自治体や事業実施パートナー、難民を直接支援するボランティアと協力し、レバノンにあるUNHCRの5つの事務所は、不測の事態に備えた、国全域で利用できる緊急救援物資の備蓄を検討することに加え、関係機関合同の対応チームも設置しました。
冬季事業が優先するのは、最も困窮していると事前に特定されたすべての人です。まずは、標高500メートル以上の地域に暮らす家族、極めて安全性に欠けるシェルターに住む人々、そして経済的に弱い立場にある人々です。貧しいレバノン人を含む数十万人が、何らかの冬季支援を受けています。入念に計画された今年の関係機関合同の冬季事業は、難民と、レバノンの貧困家庭双方に対して少なくとも7500万米ドルの支援を行っています。
レバノンの手厚い対応と課題
「4年近く前に、最初のシリア人難民が国境を超えてレバノンに入ってきて以降、レバノンの各コミュニティは、じつに驚くほどの規模で温かい手を差し伸べてきました」と語ったのは、アバーシーでの難民家族との面会を終えたニネッテ・ケリーUNHCR駐レバノン代表です。
「レバノンは目下、自国民とシリア人難民の双方に対応するというかつてない難題に直面しています。レバノンは人口に対する難民の割合が世界で最も高く、長期的な開発を含めた、より世界規模の支援が緊急に必要とされています。」
* 難民保護の目的で仮名を使用しています。
Brian Hansford レバノン、アバーシーにて
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