【UNHCRからこんにちは~職員インタビューvol.1/中村恵さん~】part 2
公開日 : 2014-09-13
前回はUNHCRで働くことになったきっかけや、その後のキャリアについて詳しくお話ししてくださった中村さん。
今回は続編です!難民支援への情熱や彼女の今後の目標、難民支援の未来を担う若者へのメッセージなどをご紹介します。
Q:ここまでの激動のキャリアをお聞きしていて感じたのですが、UNHCRで働くというのは、何か、完璧な答えがあるわけでも、終わりが明確に見えるお仕事ではないと思うのですが、モチベーションを維持するのが難しく感じたことはないのですか?
A:それは全然ないです。完全な答えなんて、最初からないと思っていますし、プロセスが大切だと思っています。プロセスから学ぶことがたくさんあります。
こうしている間にも、世界全体は動いているわけで、それに関わっているのって、すごいダイナミックなことで、大変だけど、やりがいがあります。
何か答えがほしくって、やっているわけではなく、このプロセスの中で、できることは必ずあると信じ、それをやり続けているのです。
Q:中村さんは、どうしてそんなに情熱がわくのですか?
A:今、難民にいる側にいる人たちと、難民を支援する側にいる人たちって、たまたま今いる立場がそうなだけで、自分が死ぬまでに逆の立場になる可能性もゼロじゃないと思っています。
そう考えれば、自分がもし、今、難民の立場だったら、助けてほしいと思います。

自然災害とかでも、きっと、被害にあう前日までは、まさか自分が被害にあうわけなんてないと、テレビや新聞を見ていることの方が多いかもしれない。でも、冷静に考えれば、実際は、自分がそっち側の立場になることは絶対ないという保証はないと思うんです。
また、難民問題ってすごく世界の歴史と関わっているんです。
それぞれの難民問題は、それぞれの地域の歴史が積み重なって、今の現象がおきているので、「難民問題」っていう一つの切り口があるがゆえに、中東の歴史、ロシアの歴史、東南アジアの歴史…そこに至るまでのプロセスを学ぶことになり、ただ大変というよりも、知的好奇心が刺激される面もあります。
人が人を助ける、支え合うっていうことも教えてもらい、普段の生活の中で近所の人と日頃から親しくしておこうとか、難民問題に関わっていると、ベーシックなところで、足元を見直すこともあります。
ちなみに私は、ミャンマー赴任生活から、生物の原点みたいなものを学んだおかげで、今では、無農薬家庭菜園にはまってしまいました。
Q:難しくて大変そうというイメージがありましたが、そういう一面もあったのですね。それでは、今後についてお聞きしたいと思います。今後、協会で働いていくうえで、目標としていることは何ですか?
A:私自身、国連UNHCR協会という組織自体が存在しなかった時代を知っているので、今、この協会があって、若い人もどんどん入ってきて、いろいろな活動ができるようになってきたことを、とても嬉しく思っています。
この場を活用して、それぞれの持っている能力を最大限に発揮すれば、少しでも物事をよくしていくことができると思います。

若手の皆さんができることは、どんどんおまかせして、私が貢献できる部分については、しっかりとやっていきたいです。
この職場もようやくしっかりした組織になってきましたので、これからは、より外に発信していきたいと思っています。
今回、このインタビューを受けて、私にとっては当たり前のようなことが、もしかしたら、多くの日本人にとっては、当たり前じゃないのかもしれないと感じました。
もし、そうだとしたら、こういう発想もあるし、こういうことに関わってみるのもなかなかいいものですよというのを発信していけたらいいなぁと思いました。もちろん、難民支援をしていく上で、大変なことはいっぱいありますが、勉強になることも多いと思います。
Q:最後に、中村さんから見た今の日本のイメージ、若い人たちへのメッセージって何かありますか?
A:ミャンマーにいた頃、いろいろな国から集まった同僚たちから、「日本は世界で有数の自由で豊かな国だよね」とよく言われました。
実際、同じ組織の同僚なのに、それまで育ってきたプロセスで貧しかったり、発言の自由がなかったり、社会の不安定さに翻弄された家族の歴史を持っている人もいました。
それに比べたら、少なくとも第二次世界大戦後のこの69年間、日本が平和にやってこれたというのは、すごいことだと思います。ただ、それは、そのタイミングで生まれ育った運の良さでもあるわけで、私たちがそれぞれに努力していかないと、持続していかないと思います。
一人一人が、手を抜かず、気をぬかずに努力していることがすごく大切だと思います。皆さんも様々な人と関わると思いますが、そのときに一人一人との人間関係において、支えあって、よい関係を築く努力をすることが、世界を少しずつよくしていく土台になると思うのです。

また、世界的な大きな動きについて勉強していくことも大切です。
問題の表面だけ見ないで、その地域の歴史、いったいその前までに何がおきたのかということまで深く思いを、はせると、また違う視点から見えてくるものがあります。そして、何よりも世界を構成しているのは一人一人の人間で、自分もその一人なのだという自覚が重要だと思います。
そして、何よりも世界を構成しているのは一人一人の人間で、自分もその一人なのだという自覚が重要だと思います。
自分なんかとか、自分は適当にやっていていいんだというのは、無責任。そんな状態で、何らかの情勢不安にまきこまれてしまっても、それまでの自分の無責任が原因になっていることにもなります。
一人一人が自分の責任を自覚して、やるべきことをやるっていう意識をしっかりもたないといけないと思っています。
—胸に刺ささります、そのお言葉。今日、帰ったら、歴史の教科書を引っ張りだして、読み直すところから始めてみようかと。汗
(笑)。そのぐらいの覚悟と自覚を持ってすごしましょう。
日本は少なくとも今はある程度の豊かさと言論の自由もあり、個人が教育を身につけているので、世界に対して貢献できることって山のようにあると思うのです。
こういう比較的安定した国で暮らさせていただいている私たちが自覚をもって世界への責任を果たしていかないと。ここで満足していたら足を救われてしまいます。平和をつくるためにアクティブでないとね!!
難民支援のための寄付をするというのは一つの手段にすぎないかもしれません。しかし、寄付というのは、その問題にまず気づかないとできないものです。
寄付をするという一つのアクションを提案して、人々に世界への気づきを促して行くということも、この協会の一つの重要なミッションだと思っています。今後ともご支援よろしくお願いいたします!
—ありがとうございました。なかなか終わりが見えない難民支援活動をする上で、答えよりも、そのプロセスを大切にしているという中村さん。前向きに、次々と挑戦を続ける中村さんの生き方をお聞きし、自分にできることも何かあるのではと感じました。
今後も【UNHCRからこんにちは~職員インタビュー~】のコーナーは続きます!
次回にこうご期待!