【UNHCRからこんにちは~職員インタビューvol2./北川愛里さん~】 part 3
公開日 : 2014-11-22
3週にわたる北川愛里さんのインタビューの、最終回です。
Q:この先、日本にこういう国になってほしいという希望はありますか?北川さんの個人的な思いで構いません。
A:この仕事をしていると、難民を受け入れるメリットって何ですか?日本社会にとってどうプラスになるんですか?難民を受け入れて、治安が悪くなったら、どうするんですか?という質問を、学生などから受けることがあります。私はそもそもそんな質問が出ない社会が理想だと思うんです。
この問題は実はもっとシンプルなのではと思ったりします。近所で困っている人がいたら、声をかけて自分が出来ることをしますよね。「難民」に対してもそれと同じ感覚で接するのが本来のあり方な気がします。たまたま、国境という線があるだけで、「困っている人を助ける」という思いは誰もが共通に持っているのではと感じます。原点に戻って考えてみる、言葉の壁があるなら教え合う、文化が違うなら学び合う、その違いこそが面白い、そんなふうに自然に言える社会になってほしいと願っています。
-メリットは、自分たちの捉え方次第で、いくらでもあるということですかね。
日本に限らず、世界中でもっと互いの違いを認めてあって、多様性を尊重する社会になっていけばと願っています。難しいかもしれませんが、もし、一人でも多くの人がそう望めば、世の中は変わっていくと思います。
Q:そういう世の中をめざしたい場合、今の若い人たちに、こういうことをやっておいた方がいいよとか何かアドバイスはありますか?
A:私自身、20代の頃は、そんなに世の中の問題に目が向いていませんでした。ですから立派なアドバイスはできませんが…でも、今世の中で起きていることに無関心でいてほしくないと思います。自分が安心して勉強できて、仕事を選べて、自由に暮らせることが当たり前ではないと気付き、そして感謝の気持ちを忘れないでほしいと思います。そして世の中でおきていることに目を背けないでほしいです。
どこか遠くで起きていると思っていても、実は全てがつながっていて、あなたも無関係ではないかもしれない。少しでも関心をもって、自分にできることはなんだろうと考えることは重要で、私は、そういう生き方をしていきたいです。それが必ずしも難民支援である必要はないですし、自分が興味あることに対して、出来ることから始めるというので良いと思います。
Q:中には、世の中でおきていることは知らなくても生きていけるから、無関心のままでいいかなと考えている人たちもいると思うのですが、そういう方に向けて、北川さんは業務上、何か工夫されていることはありますか?
A:私自身これまで関心はあったけれども、何もやってこなかった一人です。私のように、関心があって何かやりたいけど、一歩を踏み出せていない人たちが、行動にうつすためのきっかけを作るのが、広報の仕事なんだと思います。
ちょっとしたボランティアをしてもらうことも大きなステップですし、難民映画祭に映画を観に来て頂くのも大きなアクションですし、自分の目で見て感じたことを家族や周りの人に話すことも大きな意味を持ちます。
寄付だけじゃない様々なオプションを一つでも多く提示することが、ポテンシャルを持った人たちにきっかけを提供できることにつながると思うんです。オプションも沢山あれば、10個のうち、1個ぐらいは、「これすごい、共感できる。やってみたい!」とアクションにつながるかもしれません。
Q:ここまでのお話をきく限りでは、広報のお仕事に大変精力的に取り組まれていて、どんな難題もクリアしていきそうな勢いを感じますが、ちょっとこれはまいったなぁとか、難題はありますか?
A:私自身、難民になったことがなく、難民の言葉をかりて伝えることしかできません。突然家を追われた人の悲しみや絶望に寄添い、伝えていくにはどうしたら良いかと常に考えています。
-想像の域を超えられない葛藤ですか…。北川さんは、数年後には、フィールドに出ていらっしゃるかもしれませんね。北川さんの今後がとても楽しみです。お忙しい中、インタビューにご協力いただきありがとうございました。
※北川さんインタビュー全パート【Part1】,【Part2】もお楽しみ下さい。
◆ プロフィール◆北川愛里(きたがわ あいり)UNHCR駐日事務所PI Associate 広報アソシエイト。千葉県出身。2002年立教大学文学部卒業後、アナウンサーとしてTBSに入社。仕事を続けつつ2011年4月に東京大学大学院総合文化研究科に進学。2012年にTBSを退社し、2012年11月より現職。2013年、東京大学大学院総合文化研究科修了。
