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『僕が経験したことは“苦難”ではなく“挑戦”なんだ』

UNHCR親善大使として来日したゲール・ドゥエイニーさん

難民から俳優・モデルへ 南スーダンからニューヨークへ
映画『グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~』出演
UNHCR親善大使ゲール・ドゥエイニーさんインタビュー

立ち見が出るほど盛況だった映画『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』

10月2日から始まった第10回『UNHCR難民映画祭』。毎年秋にUNHCR駐日事務所が主催する『UNHCR難民映画祭』は、世界中から集められた数々の映画を通じて難民や国内避難民、無国籍者等に関する啓発をおこなうイベントで、本年も10月2日~11月1日まで全国3都市(東京・札幌・仙台)で計9日間開催されています。10月2日、東京・青山スパイラルホールでのオープニング上映『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』は、立ち見が出るほどの盛況で、難民問題に対する関心の高まりを感じるものでした。当日は映画上映後に、作品に出演している俳優のゲール・ドゥエイニーさんを迎えた公開トークイベントがおこなわれました。

 

スパイラルホール

©UNHCR

第10回UNHCR難民映画祭

UNHCR難民映画祭は毎年、様々な協賛団体からのご協力と個人の方からのご寄付によって開催が実現されております。各会場において、映画祭の趣旨、当機関の活動にご賛同いただける皆さまからのご寄付を募っております。

『UNHCR難民映画祭』公式サイト

 

国連UNHCR協会では、このイベント前に、初来日中のゲールさんに、今、どのような思いでUNHCR親善大使(注1)として活動しておられるのか、また、難民としての経験、あるいはアメリカへの定住についてなど、ゲールさんの人生のターニングポイントとなった出来事について、お話をお伺いしました。

 

 

ゲール・ドゥエイニー プロフィール:
アメリカ在住の俳優/国際的モデルでUNHCRの親善大使(東アフリカ・「アフリカの角」地域)。映画『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』では主人公の1人、ジェレマイア役として出演。1978年、スーダン南部(現在の南スーダン)で生まれ、内戦のさなか家族と離ればなれになり、強制的に少年兵として徴兵される。14歳でエチオピアの難民キャンプへ逃れ、その後、第三国定住で米国へ移住。米国の大学を卒業後、俳優・モデルとしてキャリアを重ねる。2010年祖国南スーダンに18年ぶりに戻り、母親や兄弟と再会を果たす。2015年にUNHCRの親善大使(東アフリカ・「アフリカの角」地域)に任命され、難民の声を世界に届ける活動を精力的におこなっている。

 

UNHCR親善大使の役割を担うことにより難民に貢献したかった

――私たちは南スーダンを訪れたことがないのですが、美しい場所ですか?

 

ああ、僕にとっては美しい場所だね。東京とはだいぶ違うよ。動物もたくさんいる。

 

――小さい頃、あなたは内気な子どもでしたか?

 

ぜんぜん(笑)。

 

――たしかご兄弟が63人いらっしゃったとか。

 

そうだよ、大家族だったね。あの頃、父はとても充実した生活を送っていたよ。

 

――あなたが紛争で離ればなれになったご家族と再会したのは2010年、たしかドキュメンタリー映画『GER : TO BE SEPERATED』(注2)の撮影のときでした。

 

ああそうだ、よく知ってたね(笑)。その映画のタイトルは僕の名前の意味なんだ。(注:GERは南スーダンの言葉で、意味は“TO BE SEPERATED”=離ればなれになって)。君たちが僕の名前の意味を知っているって知らなかったよ。

 

映画『グッド・ライ』は南スーダンの人についての映画であり、人間が持つ強さについての映画

――どうしてUNHCR親善大使を引き受けたのか、教えていただけますか?

 

UNHCR親善大使になることは僕にとって「責任」だった。小さい頃からUNHCRの事は知っていたよ。だからUNHCRの事を報せる仕事をするのは僕にとって責任を果たすことだったんだ。時期が来た、という感じだね。その役割を担うことにより難民に貢献したかった。

 

――UNHCR親善大使になることはあなたにとって、とても意義のあることだったのですね。

 

ゲール・ドゥエイニー

©国連UNHCR協会

ああ。僕のふるさと南スーダンでは紛争が起こりたくさんの人々が難民になってしまった。僕がUNHCRの一員として活動することは、僕の個人的な体験を使って、難民の人たちを支援するひとつの形だと思ったんだ。UNHCRのことは小さい頃から知っていたし、素晴らしい仕事をしていると思っていたよ。

 

――映画『グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~』(注3)でジェレマイアという役柄を演じることは、あなたにとってどんな経験でしたか。あの映画はあなた自身の人生の物語を映し出すところもかなりあったかと思うのですが。

 

あの映画に参加した経験は自分にとっていい経験だった。『グッド・ライ』は僕にとって特別な作品だよ。南スーダンの人についての映画であり、人間が持つ強さについての映画でもある。生き残るための強さ。それが、僕がこの映画に共感を覚えるところなんだ。僕はこの映画を見て、どうやってこの子どもたちが自分の中の生き残るための強さを見つけたのか、知ってほしいと思う。

 

――あなたは映画に登場する南スーダンの子どもたちを見て、自分の幼いころのことを思い出されましたか。私たちはあのような苦難を経験したことがありませんが、あなたは様々な苦労をされたかと思います。

 

あの子どもたちは、あんなに若くてもああいった自分を試される経験をすることになった。あの頃の自分にもおそらく同じような強さがあったのではないかと思う。おそらくすべての人間の中に強さがあるのだと思うよ。だからこそ、僕はこの映画に愛着を感じる。なぜって、僕も自分を試される経験をしてきた。そして、それを乗り越えなくてはいけなかった。僕はあの頃の経験を“苦難”だとは思わない。あれは“挑戦”、自分を試される経験だったんだ。

 

――今、南スーダンはまた難しい状況にありますが、あなたは南スーダンの人たちがこの苦難を乗り越える強さを持っていると思いますか。

 

乗り越えると信じているよ。南スーダンの人には立ち直る力があると思う。人はみんな、挑戦を乗り越える強さをもっている。

 

今までの自分の暮らし方や文化を失ってしまうのではないか?

――あなたが、ふるさとを18年ぶりに訪れたとき、ふるさとの皆さんが「あなたは変わってない」と言った、というエピソードをあるインタビューで読み、それが強く印象に残りました。難民から俳優・モデルへ、南スーダンからニューヨークへ、多くの人はそれほど大きな環境の変化があると変わってしまうものですが、あなたは違ったのですね。

 

ゲール・ドゥエイニー

©国連UNHCR協会

僕は変わってない、とふるさとのみんなが感じたなら嬉しいよ。でもそれは本当じゃないと思う。まったく変わらなかったら良くないよね(笑)。人生の中で人は変わるよ。昨日と今日でも、もう変わっている。おそらくみんなが言いたかったのは、僕が南スーダンでのやり方をちゃんと覚えていた、ということだと思うよ。僕はアメリカに行き、そこで学校に通い、エンターテイメント業界で働いた。それは南スーダンとは全く違うことだった。僕はもしニューヨークにいたら、ニューヨークのやり方で暮らす。もし東京にいたら、東京のやり方で暮らす。もしふるさとの南スーダンの村にいたら、村のみんなとまったく同じやり方で暮らすよ。

 

 

 

――はじめてアメリカに着いたとき、あなたはどう感じましたか?

 

今までの自分の暮らし方や文化を失ってしまうのではないか、と心配になった。確かにアメリカに行ったら、まず始めにアメリカでのやり方を身に着ける必要があった。だけどアメリカに行ってから母国の文化はより大切なものになったんだ。僕はそれを大事にしようと思った。だから南スーダンに戻った時、僕が持っている母国の文化に照らし合わせながら新しい事を身につけようと思ったんだ。それは僕にとってとても興味深く大切なことなんだ。それによって僕は僕のままでいられるからね。

 

――あなたにとって母国の文化の重要性はアメリカに行ってから大きくなっていったのですね。

 

ああ。僕はそれを失いたくなかった。と同時にアメリカで経験することを怠りたくもなかった。両方を僕の中でひとつにしたかったんだ。

 

僕は、明日は今日より良くなる、と信じている

――あなたはファッション業界に入ってから「fashion for clear water」あるいは「fashion with care」といった、ファッションと人道的な支援を結びつける活動を続けました。

 

ファッションは良いものだ。そして洋服も良いものだ。だけど、それらはあなたや僕を作るものではないだろう?僕は目的を持ったファッションが好きだ。例えば「水」のためのファッション。「目の前の問題に立ち向かっている人」のためのファッション。あるいは「教育」のためのファッション。ファッション業界で洋服を作っている人に本当にたくさん出会ったよ。そして友達になった。一緒に仕事もした。そして、長く仕事をすればするほど、目的を持って物事をおこなうことの大切さを知った。僕は誰かのためになるものが好きなんだ。

 

――それはあなたがアメリカに来て気づいたことというか、もともと持っていた考えなのかもしれませんね。

 

もしかしたら南スーダンの文化の一部とも呼べるかもしれない。自分のために生きるのではなく、家族のために生きる。自分が暮らすコミュニティのために生きる。それは南スーダンの人たちの生き方のひとつの側面なんだ。

 

――そしてあなたはこうやってきたあなたの人生の道のりを“挑戦”と呼ぶのですね。

 

そうだよ、“挑戦”さ。“苦難”ではない。

 

――そういった挑戦の道のりをあなたが乗り越えてこられたのはどうしてなのでしょう。

 

僕は今日、何が起こるか知らない。そして、明日は今日とは同じではない。だからいつも明日は今日よりよくなると思っているんだ。

 

――明日を信じる考え方、それは南スーダンの人たちの考え?あなたの家族にある考え?それとも・・・

 

これは僕自身の考え方だね(笑)。

 

<取材:2015年10月2日 東京・国連UNHCR協会>

UNHCR親善大使ゲール・ドゥエイニーさんから日本のUNHCR支援者の皆さまへのメッセージ

 

第10回UNHCR難民映画祭に向けて寄せられたゲール・ドゥエイニーさんのスペシャル・コメント映像(UNHCR駐日事務所公式YouTube)

第10回UNHCR難民映画祭初日/ゲストトーク:『グッド・ライ』ゲール・ドゥエイニーUNHCR親善大使(UNHCR駐日事務所公式サイト)

 

注1:UNHCR親善大使 (UNHCR Goodwill Ambassador)

アントニオ・グテーレス高等弁務官と共に、UNHCRの顔として世界的に活動する。国連の組織のほとんどが親善大使を設けており、親善大使は心から人々を助けたいという気持ちを持っていることが必要とされる。

注2:『GER: TO BE SEPERATED』 2012年に公開されたゲール・ドゥエイニーさんが主役のドキュメンタリー映画(日本未公開)。故郷アコボを訪れ、10数年ぶりに母親に再会したゲールさんは、そこで自分の名前「ゲール」の意味を母親から初めて聞く。それは「TO BE SEPERATED」(離ればなれになって)という意味だった。

注3:映画『グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~』。ロン・ハワード制作、フィリップ・ファラルドー監督、リース・ウィザースプーンほか出演による映画作品。(2015年日本公開)南スーダンの紛争に巻き込まれ、やがてアメリカへと移住した子ども達“ロスト・ボーイズ”の実話を元にした物語。紛争からの過酷な逃避の旅、そしてアメリカに渡ってからの日々が描かれている。

映画『グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~』公式サイト

 

***取材こぼれ話***

 

ゲール・ドゥエイニー

©国連UNHCR協会

数々のファッション誌の表紙を飾る国際的なトップ・モデル、そして俳優として活躍してこられたゲールさん。190センチを超える長身で、一時期NBAを目指すバスケットボールの選手だったこともあり「日本に来たらこんなに背の高い人にあったのは初めて、とよく言われるけど、僕より大きい日本人バスケットボールの選手に会ったことがあるよ」と笑顔で語っていました。物静かで知的な語り口の中に温かさとユーモアがちりばめられた素敵な人柄が印象的でした。

 

 

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