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支援の現場から/最新ニュース

ロックダウン中のイラクの難民キャンプで、
難民によって行われる心のケア

自身も難民である訓練されたコミュニティワーカーが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行期間中にイラク北部で、重要なメンタルヘルス支援を提供しています

イラク北部のアクレキャンプで、他の難民にメンタルヘルス支援を行なっているシリア難民のファラク・セロ(右)は、自身の母親と妹に話しかけている(2020年1月26日)

ファラク・セロは、家や故郷、愛する人を突然失うことによって、精神面での健康状態に何がもたらされるかを知っています。2013年にシリアの内戦が彼女の母親と妹が住んでいた地域まで及んだ頃、彼女はダマスカス大学で哲学を学んでいました。

 
ドホーク(イラク北部)2020年7月8日 ― 彼女は学業を諦め、家族と一緒にイラク北部の街アクレへと逃れました。そこではサダム・フセイン政権の時代に政治的反体制派を収容していた元刑務所が、千人以上のシリア難民を受け入れるシェルターに変わっていました。

 
「国境越え、完全に未知の国に来ることはとても難しかったです」と、地元で「城塞」として知られているアクレキャンプに今も住むファラクは、そう語ります。

 
要塞のような構造の住居は狭苦しく、少しの自然光しか入りませんが、ファラクは自身の適応法を、UNHCRのメンタルヘルス・心理社会支援部門(MHPSS)でコミュニティワーカーとしての働くようになった2017年から、他の難民と共有しています。

 
「たくさんの人の痛みを目の当たりにする場所です」と、彼女は言います。「私を信用して、また支援を受けに戻ってくる人を見ると達成感が湧きます。」

 
キャンプで難民が直面する精神的苦痛に関する支援とその詳しい知識は、現在これまで以上に必要とされています。新型コロナウイル感染症の世界的流行以降、中東地域周辺の難民と国内避難民の間で精神面での健康問題が急増していることを警告する報告が、UNHCRに届いています。

 
「多くの難民と国内避難民は、意外なほど立ち直りが早いです…しかし彼らの適応能力はもう限界に達してきています」と、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は先月、警告しました。

 
コミュニティワーカーによると、アクレと、イラクのクルディスタン地域にあるその他8つの難民キャンプにいる難民は、深刻なレベルの不安や鬱に悩む人が多くなっています。その原因は、ウイルスに対する恐怖からくるものよりも、厳しい外出禁止令によって収入が絶たれることで、キャンプから出て近くの街や都市で働けなくなることからきています。

 
「多くの難民キャンプの住人は日雇い労働者で、避難から数年でようやく自身の生活をコントロールできるようになったと感じていた人もいます」と、ドホーク都市近郊のドミズ第一難民キャンプに住むシリア難民でコミュニティワーカーのカワ* は説明しました。

「誰もが恐れていると言っても過言ではありません」

「キャンプに住む状況がどのようなものか私にはわかります」と、彼は言い足しました。「ストレスや不安、恐怖が蔓延しています。誰もが恐れていると言っても過言ではありません。」

 
今回のロックダウンによって、MHPSS部門で働いている精神科医やカウンセラーのキャンプへの立ち入りがほとんど、もしくは全くできなくなったため、電話相談サービスなどを通じてカウンセリングを提供せざるを得ませんでした。幸運なことに、キャンプに住むコミュニティワーカーが、応急処置としてできる心のケアの訓練経験を利用し、隣人の玄関先で臨時の精神的健康に関するセッションを行うことがまだできています。

 
「私たちの生活方式では、家族は自身の家の前に集まり団欒したり、お茶を飲んだりして過ごすことが多いです」とカワは説明します。「私たちは、ソーシャルディスタンスを確保しながら、これらのグループを対象にセッションをしています。」

コミュニティワーカーのファラク・セロ(右)は同郷のシリア難民に、イラク北部アクレにあるアルカラ(城塞)キャンプのメンタルヘルス支援について話す(2020年1月26日)

UNHCRと19のコミュニティワーカーのチームの調整役を担うメンタルヘルス・心理社会支援官のヒバイン・アリは、キャンプにおけるコミュニティワーカーの存在のおかげでMHPSS部隊は、必要性が高まっているメンタルヘルス支援を、ロックダウン期間中でも継続することができていると言いました。

 
「以前から彼らの存在は重要でしたが、コミュニティワーカーの役割はこれまで以上に重要となっています」と彼女は述べています。

「以前から彼らの存在は重要でしたが、コミュニティワーカーの役割はこれまで以上に重要となっています」

学校やコミュニティ・センターにおけるグループ活動が中止なる一方で、コミュニティワーカーは個別カウンセリングをする際に、感染防止対策のための保護装備(PPE)を装着できる一次医療センターで、今も啓発セッションを開催しています。

 
「私たちはここでは皆良き隣人ですから、個別にさらなる支援が必要とされるケースを見守っています。勤務時間に関わらず隣人が訪れれば、お茶を飲みおしゃべりをしながら、見守りを行います。」

 
強迫性障害などのような、パンデミックが始まってさらに状態が悪化した持病をもつ人は、専門的なケアを受けるため、精神科医や心理学者に紹介される必要がしばしばあります。しかし、コミュニティワーカーは、課題管理+(Problem Management+)と呼ばれる世界保健機関(WHO)によって開発された心理学的介入における訓練を通じて、ストレスや不安、鬱などの苦しみから人々を救うことができるのです。

 
「私たちは、彼らが前は問題にどのように対処していたかを尋ねます」と、ヒバインは言います。「難民たちは以前に自分たちがやった対処法に、実際に戻りつつあります。彼らは初めてここに到着した時に、難民キャンプ内に閉じ込められる経験をして、今この問題に対応しようとしているのです。」

 
主な不安の原因が、収入を絶たれること、もしくは食卓に食料を用意できないことである場合は、コミュニティワーカーがそのようなケースを、食料及び現金支援ができるNGOと国連機関に紹介することができます。

 
ロックダウン期間中にコミュニティワーカーが接触できない人のために、UNHCRはキャンプ住民と国内避難民を含む地元コミュニティに向けで放送している、ドミズ第一難民キャンプのラジオ局に目を向けました。毎週水曜日にUNHCRの臨床心理学者が放送に参加し、心のケアのコツを共有したり、リスナーからの電話に応えたりします。

 
カワは、それは彼が知る地元で唯一の、パンデミックによる公共医療への脅威よりも、メンタルヘルスに対応したプログラムだと言います。

 
またコミュニティワーカー自身の重荷になりすぎないよう、コミュニティワーカー向けの支援もあります。

 
「私たちはWhatsAppのグループで彼らに連絡し、今の状況や彼らがどうしているかなどを確認します」と、ヒバインは言います。「彼らが誰かと話したいときはいつでも、私たちが対応できるよう努めています。」

 
カワは、自己管理のコツが「とても役に立つ」と認めています。

 
「私たちは他人を助けるために、自分を助ける必要があります」と、彼は言います。

 

*彼の苗字(性を)を使用しないよう依頼されています。

 

追加報告・記載はクリスティ・シークフリートによってされます。

シリア難民は、イラクのクルディスタン地域アクレで「城塞」として知られている元刑務所に2013年から暮らしている

Rasheed Hussein Rasheed

 
原文はこちら(英文)
Refugees deliver mental health services to locked down camps in Iraq

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