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支援の現場から

難民の子ども、ルーマニアの包含的な合唱団で歌う

歌を通して子どもたちを繋げる計画には難民も含まれている

ブカレストのフェルディナンド王高校での合唱練習の様子

ブカレスト(ルーマニア)2018年5月9日 ― リナ・ジャムマルは、息子のサムに音楽の才能があることを分かっていました。小さい頃、彼はソファーの上で飛び跳ねながら、ヘアブラシをマイクにしてラジオやテレビから流れる有名人の曲を歌っていました。

 

ジャンマール家の兄妹のサラ(10歳)とサム(12歳)はシリアから来ている

現在、サムと兄妹のサラは、ルーマニア政府による歌を通じて難民を含む異なる背景を持つ子どもたちの統合を目指すプログラムの一部である合唱団に参加しています。

 
「母親として、子どもたちが自分たちの夢を叶えている姿を見られるのは、とても嬉しいことです」とリナ(39歳)は話します。

 
シリア人家族は、2013年に戦火で荒廃したアレッポからブカレストに来ました。すでにルーマニアにいた親戚と合流するためにトルコを経由してきました。3世代に渡る9人家族は、市街地の端の地域で3部屋あるアパートで暮らしています。

 
リナの夫、ジハード(46歳)は繊維製品を販売する仕事に就いています。年長の娘のブドゥール(22歳)と息子のアブドゥル(20歳)は、それぞれ大学で医学と土木工学を学んでいます。祖父母は、ルーマニアで生まれた3歳のカイサルが居間で走り回ってるのを見ながら静かに座っています。

「子どもたちが自分たちの夢を叶えている姿を見られるのは、とても嬉しいことです」

サム(12歳)とサラ(10歳)はアラビア語の学校に昼間は通っていますが、ブカレストのスクアラ・ジムナジアラ・フェルディナンドⅠ(フェルディナンド王高等学校)で週に2回行われる合唱団の練習に参加しています。

 
1926年に建設されたこの学校は、合唱で子どもたちを繋げることを目的としたカントス・ムンディという全国で展開されているプログラムに参加しています。カントス・ムンディはルーマニアで有名なマドリガル・チャンバー・クワイアが主導しています。

 
学校の合唱部や教会の聖歌隊、盲目の人や障がい者のための合唱団など多岐にわたる、およそ850の合唱団に所属する約3万人のルーマニアの子どもたちがカントス・ムンディという傘の下で歌っています。

 
現時点では参加している難民の数は少ないのですが、企画者はより多くの難民に参加して欲しいと思っています。合唱では、新参者が言語や文化を学べ、地元の人とも関わることができるため、難民の地域への統合を促進する最高の方法の一つだと企画者は考えています。

サムとサラが合唱練習に参加している

「様々な背景を持った子どもたちが集まります。子どもたちは、『私は他の人と違う』『私は他の人より優れている、劣っている』といった考えを一切もたずに歌います。子どもたちはそういう風に考えません。彼らは雰囲気を感じるのです」とマドリガル合唱団の首席指揮者とカントス・ムンディの芸術監督を務めているアンナ・ウングレアーヌは言います。

 
アパートに戻ると、サムとサラは合唱団の練習に向けて準備をします。サムはグレーのスーツを着こなし、妹のサラは白のレースブラウスに可愛らしく身を包んでいます。

 
サラは恥ずかしがり屋で、一人で歌うことは好きではないため合唱団は彼女にとって理想的です。サムはもっと自信があり、ソファーに飛び乗り、彼がどのようにヘアブラシを使いながら歌っていたのかを披露します。さらにサムは、シリアの紛争についての自作のラップを歌います。

学校に行くとき
『バイバイ』とお母さんに言う
家に戻ったら
また会えるのかな?

たくさんの人が居た道
シリアの市場が恋しい
爆弾の音を覚えている
身体に銃弾があるかのように

テレビを点けたとき、
天気予報の方が見たい
友達が亡くなる姿は見たくない
友達が怪我をする姿は見たくない

僕たちはシリア人だ
シリアを復興させる
僕たちはシリア人だ
苦しみを忘れよう

「私は、これは彼らを助ける方法だと考えています」

出場者がリハーサルのために到着すると、フェルディナンド王学校の集会場は満員になります。サムとサラは自分たちと同い年のルーマニアの子どもたちが並んで座っている席に合流します。リナは後ろの列に座り、サムとサラが参加している様子を誇らしげに見ています。

 
小学校の教師で合唱団の担当者であるシモナ・スピレスクは、難民の子どもを自分のクラスに受け入れることに積極的です。「私は心を開いて様々な考えを受け入れます。難民に関するたくさんの文献を読みました。彼らのことを聞いた時、とても胸が苦しくなり、泣いてしまいました。私は、これは彼らを助ける方法だと考えています」と彼女は語ります。

 
マドリガル合唱団のテノール歌手のエマニュエル・ペチンジナも壇上に上がり、彼女に指揮する方法を教えるとともに子どもたちに歌のレッスンをしています。

 

サムとサラは週2回、合唱練習に参加している

ペチンジナはビザンチン帝国と民族伝統に起源があるルーマニアの合唱音楽の文化について話しています。ルーマニアには、共産党独裁者ニコラエ・チャウセスクのもとで大規模な合唱団がありました。

 
「私たちは愛国心に溢れる曲やアップテンポな曲を歌っていました。悪い曲ではないのですが、言葉が悪かったです。もちろん今歌う題目は違います」と彼は思い出します。

 
そのため、彼は「マ・メ・ミ・モ・ム」と子どもたちの発声練習を終えた後、黒板に五線譜を描き、ドレミ音階の基本をたたき込みます。

 
そして子どもたちが「フレール・ジャック」をいくつかの言語で歌い、じょうろの歌を歌います。これらの曲自体は単純ですが、明るい音楽です。

 
ペチンジナが「ブラボー!」と叫び、ルーマニア人が好きな曲の「ヴィネ、ヴィネ・プリマヴェラ!(春がすぐそこに来ている!)」でリハーサルが締めくくられます。

 
彼はこのプログラムの利点を説明します。「私たちはすべての子どもを迎え入れて、普通の状況を創出しています。これは文化交流です。難民も自国の曲を紹介してくれます。音楽は普遍的なものなのです。」

 
サムとサラは楽しんでいるようです。「一人で歌っていると、自分の間違いは聞こえません。合唱団にいるときは、聞いて、繰り返して、もっと良くなります」とサムは言います。

 
曲の選択に関して言えば、もしかしたらサムは「フレール・ジャック」に疑問を抱いているかもしれません。

 
「合唱団で歌うことはとても素敵ですが、それでもラップの方が好きです」とサムは話します。

サム(左)とサラ(左から2番目)を含めたジャンマール一家

Helen Womack

 
原文はこちら(英文)
Refugee children find voice in Romania’s inclusive choirs

学校に通えない難民の子ども 350万人

難民の子ども達に最も必要なのは学校教育です。現在世界で、学校に通うことができない難民の子どもたちは350万人。難民の子ども達はどんな状況に置かれているのでしょうか。

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