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実践例:高校家庭科における特別授業(東京)

2018年2月、岩倉高等学校(東京都台東区)の家庭科の塚本美森先生によって、『いのちの持ち物けんさ』を活用した難民についての発展的な授業が展開されました。

塚本先生は2017年夏に行われた「難民についての教材活用セミナー」に参加され、非常に熱心に取り組んでいただき、セミナー内でもさまざまなアイディアを出していただきました。

今回、家庭科の授業として、新たな観点から難民の問題について考えることのできる素晴らしい実践報告をいただきましたので、以下ご覧ください。

授業概要

~はじめに~

生徒たちはこれまでの家庭基礎の授業で、リプロダクティブヘルス・ライツや子どもの権利、衣食住の機能などについて学んできた。

今回は、国連UNHCR協会開発のワークショップと担当教員作成のワークショップを通して、子どもや女性の権利侵害が起こっている、衣食住が保障されないなどの難民の境遇に対する理解を深め、自分には何ができるかを考えるという特別授業を実施した。

~授業レポート~

‐導入‐

これまで学んできた内容に関して「子どもの権利条約」「食生活の機能」などのキーワードを出して、学習内容を思い出すよう促し、それらを思い出しながらワークショップに取り組んでほしい旨を伝えて導入とした。そして、難民の定義とワークショップ「いのちの持ち物けんさ」の概要を説明した。

 

‐展開①「いのちの持ち物けんさ」‐
実施クラスは明るい生徒が多く、各色のふせんに大切なものや人を書く段階では、書いた内容で盛り上がる班も多かった。

「家族」や「友達」、「食べ物」や「洋服」といった定番のもの以外にも、「県民」「人間性」「○○(アイドルユニット)のファンであること」など、様々なもの・人が書かれていた。

青色(お金で買えるもの)の付箋をはがし、失った気持ちを書く段階に入ると、「えー生きていけない!」「無理!」などと率直な感想を発言しあい、盛り上がる様子が見られた。

今思った感想をそのままの言葉で沢山枠内に書くよう促した。

黄色(自分のアイデンティティを構成する要素や証明するもの)をはがす段階になると、自分じゃなくなるむなしさを感じている生徒が多くいた。
岩倉高等学校 難民 授業そして、赤い色の付箋をはがす段階になると、教室内の雰囲気がそれまでとは変わり、とても静かになった。

いよいよ「いのち」以外の付箋をはがす指示をすると、皆無言で感想を書いていた。気持ちの共有の時間では、「悲しい」「生きていくのが辛い」など、絶望感のような感情を発言する生徒が多かった。

無理をしないよう何度か注意喚起したが、体調不良や感情の異変を訴える生徒はいなかった。

 

‐展開②「その持ち物を守るために」‐

岩倉高等学校 難民 授業次のワークショップはポジティブな発想で行えるものであることと、グループで取り組むことを伝え、教材を配布した。まず、班員の書いた付箋から各色3つまで失いたくないもの・必要なものを選び、ワークシート②に貼っていった。班員で話し合う際はどのグループも意欲的に取り組んでおり、「家族」「友達」「スマホ」といった満場一致のものや、どれにするか迷いながら真剣に話し合って選んでいるものもあった。

その後、それらが必要である理由を緑色の付箋に書く活動を行ったが、どのグループも次々と理由を書いて貼っていた。
岩倉高等学校 難民 授業そして、それらを失わないようにしたり新たに手に入れたりするためには、どのようなことが必要か、あるいは、直接的な支援にならなくても自分たちにできることはないか考え、付箋に書いて貼る活動を行った。

対象物によっては考えるのが難しいものもあったが、「食べ物を無駄にしない、残さない」や「今の環境に感謝して勉強を頑張る」「服やもので使えそうなものを支援物資として送る」など、班員で話し合い、自分たちにできることを一生懸命考えていた。班での話し合い後は、短時間ではあったが、班で出たアイデアをクラスメイトに発表する時間を設けた。
岩倉高等学校 難民 授業最後は、難民をネガティブな印象だけでは終わらせないようにするため、自分たちにはなくて難民の人たちが持っていそうなものを想像して余白に書いていく活動を行った。

どの班も思いつくままに沢山書いている様子だった。

 

‐まとめ‐
グループワーク終了後は、振り返り・感想カードを配布して、個人での振り返りの時間とした。

 

※授業のパワーポイント資料PDF(ダウンロード/972KB)

※授業で使用したワークシートPDF(ダウンロード/77KB)

※学習指導案PDF(ダウンロード/185KB)

生徒の方の感想(振り返り・感想カードから抜粋)

・難民については、正直よくわからなかったことが多くて、どこまでが難民なのかわからなかったけど、この授業でそれについてわかったし、自分たちに今なにができるか、将来できることも考えさせられた。今普通に生きていても、他の国には普通に生きられない子どももいると思うと、一日一日を大事にしようと思えた。
岩倉高等学校 難民 授業・自分たちの生活がどれだけ豊かなのかが実感できた。自分たちに今できることは少ないのかもしれないけど、大人になったらできることはたくさんあると思うので、貢献したい。
・自分の家族、友達を失ったりしたとき、自分はどうなってしまうのか、世界には自分の好きなことができずにもう死にたいと思っている人がどれだけいるのかがよくわかった。難民の人の気持ちを知ろうと思ったことはなかったが、今回知れて、これからその人たちを考えながら生きていこうと思った。
・改めて、自分が今生きていること、家族・友達がいること、衣食住があることなどが、どれだけ幸せなのかわかりました。当たり前のことでも当たり前ではない人もいるので、感謝の気持ちを忘れないようにしたいなと思いました。自分ができることを少しずつでもして、難民の人が少しでもいなくなるように、難民の存在をなくせるようにしたいです。
・普段あたりまえだと思っていたものが、実はすごく大切なものだと実感した。それと同時に、それらを失った人がたくさんいるというのが辛く感じた。そういう人たちのためにできることがあれば、積極的にやりたいと思った。
・最初はグループで楽しい感じでやっていたが、ワークシート①の赤色のふせんを取ったときは悲しい気持ちになった。難民の人はずっとそんな気持ちなのかと思うと何かしてあげたい。

授業を実践して

2つのワークを通して、生徒たちは、難民の境遇を想像したり、その立場に立って考えたりすることができたようである。また、自分たちが恵まれていることに気づき、周りの人やものに感謝する気持ちや、自分たちにできることをやっていきたいという気持ちを醸成することができたと感じる。家庭基礎の内容との関連性としては、衣食住の機能やものを大切にするといった視点で考えることができた。一方、子どもの権利やリプロダクティブ・ヘルス/ライツの観点で考えることが難しかったようなので、関連性を感じられるように、事前学習や事後のフォローを充実させるべきだと考えた。
そして、生徒たちは以前、英語の授業において難民に関する英文を学習したようでUNHCRのことは知っていたことと、現代社会でも教科書の本文にUNHCRについて書かれていることから、クロスカリキュラムにてより深い理解となるような組み立てもこれから考えていきたいと思った。

最後に

家庭科の学びの中で工夫し実践していただくことにより、高校生のみなさんにとっては、よりいっそう命と生活に近い視点から、難民について「自分ごと」として理解と共感が生まれ、自分たちにできることを深く考える良い機会を得ることができました。

現在も、全国各地で難民についての教材を活用した実践が行われております。ご報告いただき次第、随時こちらで公開させていただきます。

最後に、授業を行うだけでなく、お忙しいなか本記事作成にご協力いただいた塚本先生に心より御礼申し上げます。

 

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