
シリア・アレッポの厳しい戦闘から家族とレバノンに 逃れてきたアマニちゃん(3歳)。凍るような寒さの中、UNHCRの配布した毛布にくるまって体をあたためます。保温性の高い、冬のための特別な毛布です。雪が降る時期はもう目の前に迫っています。でも、アマニちゃんは裸足のままです。実は彼女だけではありません。多くのシリア難民が、防寒具や靴下もないまま冬を迎えようとしているのです。
現在、レバノンなどシリアの周辺国に避難しているシリア難民は約564万人※を超えています。冬の厳しい寒さは、着の身着のまま逃れてきた難民のすでに困窮している生活を容赦なく直撃し、特に幼い子どもたちや高齢者などは命の危険にさらされます。本格的な冬の到来を迎え、一刻も早くUNHCRの防寒支援を届けることが急務です。 ※2021年9月現在
過酷な冬を前に、一刻の猶予もありません
動画:ご存知ですか?中東の冬は零下の寒さになることを
難民の暮らしに寄り添って支える、UNHCRの防寒支援

寒さをしのぐ、シェルターの防寒対策
レバノンやヨルダンなどシリア周辺国では冬は気温が氷点下に。シェルターは凍えるようなすきま風で底冷えし、夜も眠れない寒さとなります。
UNHCRは、難民キャンプやキャンプ外に暮らす難民に、布やトタン一枚のシェルターの壁や天井を補強・補修するための防寒材や工具を提供。凍てつく寒さから難民を守ります。

医療費にも、暖房費にも。現金の給付支援
長期の避難とコロナ禍で厳しい貧困に陥っている難民。冬は暖房費がかかるだけでなく、寒さで感染症にかかる子どもが多くなり医療費もかさみます。アブドゥルくん(写真・5歳)は体調を崩し、給付された現金で購入した薬を飲んでいるところです。食事の回数を減らすほどの貧困の中、各家庭が冬に最も必要な物を購入するために不可欠な支援です。

冷え込む日々に、暖房器具の提供
雪が降るほど厳しい寒さにもかかわらず、暖房器具さえ持たないシリア難民が多くいます。
低体温症や凍傷になってしまう子どもたちも多く、寒さから身を守るために安全なストーブや燃料などの提供が緊急に必要です。

冬を越えるために不可欠な物資の提供
保温性の高い毛布や冬用の上着、靴下などの防寒具、防水シートなどは、紛争から着の身着のまま逃れてきた人々の冬の避難生活に不可欠です。
UNHCRはパートナー団体と連携し、家族の人数に応じて必要な物資を提供しています。
ジーナさんと子どもたちに届いたUNHCRの防寒支援

ヨルダンの難民キャンプで私たち職員を迎えてくれたのは、2歳の男の子を抱いたジーナさん(33歳)。妊娠8か月の母親でした。シリアの自宅は爆撃で破壊され、ヨルダンへ避難してきました。2~13歳まで6人の子を抱える一家。家から持ってこれたのは、一人につき二着の服だけでした。
11月の難民キャンプはすでに凍えるような寒さで、立っていると震えが止まらないほどでした。一家は、当初は布のテントに住んでいて、暖房器具もなく本当に寒かったと話します。「テントで暖房もなくて、どうやって温かくしていたのですか?」そう尋ねると、穏やかに話していたジーナの表情がみるみる曇りました。「ただ家族で抱き合って、温めるしかありませんでした。」ジーナさんはそう言って黙りこみ、涙ぐんでしまったのです。母親としてどれだけつらい思いをしたのか、痛いほど伝わった瞬間でした。幸い一家は、この年はUNHCRから防寒支援の現金給付を受け、ガスヒーターの燃料を買い、シェルターの雨もりも修理できました。ジーナさんは、「本当に助かりました」と、実際に修理した箇所を見せてくれました。今、新しく家族が増えたジーナさん一家。今年も厳しい冬の寒さとの闘いが始まっています。この冬も、ジーナさんたちのように多くのシリア難民が、切実にUNHCRの支援を必要としているのです。
この冬も、UNHCRの支援がなければ多くの難民が寒さに震え、その命と健康が危険にさらされます
土岐 日名子 UNHCRレバノン事務所 代表補

皆様はレバノンといえば何を思い浮かべるでしょうか。レバノンは山脈と地中海に囲まれ、岐阜県とほぼ同じ面積の小さな国です。古代遺跡や豊かな自然などでも知られている一方、長年内戦が続きました。2020年のベイルートでの爆発事故では大きな被害を出し、近年の深刻な経済危機で、物資の不足や頻繁な停電など厳しい社会情勢となっています。
また、レバノンは隣国シリアから約150万人の難民を受け入れており、実に人口の6人に1人が難民です。レバノン人自身が困難な状況の今、シリア難民への感情は悪化しトラブルが増えており、難民はさらに厳しい状況に置かれています。
そうした中、難民にとって最も過酷な季節である冬が迫っています。ベイルート近郊でも雪が降り、建物の中にいても骨にしみるような寒さで暖房が必ず必要です。また、東部のベッカー高原(平均標高1000メートル)のような標高の高い地域は、気温がマイナス10度まで下がることもあり、深い雪に包まれます。各家庭では、ガス、灯油、電気、薪ストーブなどさまざまな暖房器具を使って寒さをしのぎますが、今冬は全国的な燃料不足のため、灯油を入手することが非常に困難で、電気の供給も滞っています。2021年の調査※によると、シリア難民の約9割が極端な貧困の中で暮らしているのです。
※レバノンでUNHCRなど国連が合同で毎年行っている、シリア難民世帯に関する調査
そのベッカー高原に暮らす、シングルマザーのクホドさんは冬をとても恐れています。「お金がないので、子どもたちに食べ物をいつも買えるわけではありません。パンだけの時もあります。子どもたちを寒さから守り、食べ物や服、薬も必要です。でもどうしたら手にできるのでしょうか」。クホドさんのように多くの親たちが、「家族に食べ物を買うか、温かくするか」という厳しい選択を迫られるのです。

UNHCRは昨冬、レバノンで大規模に防寒支援を実施した唯一の人道援助機関でした。この冬も、UNHCRの支援がなければ多くの難民が寒さに震え、その命と健康が危険にさらされます。レバノンの人々はこれまで、苦しい中で多くのシリア難民を寛容に受け入れ、手を差し伸べてきました。UNHCRは、状況に応じて難民だけでなくその地域で貧困に苦しむ人々にも支援を提供しています。同じ地域に住む人々に対し、「難民は助け、それ以外の人は助けない」というわけにはいきません。レバノンは、経済は崩壊し食料や燃料不足がひっ迫、今まさに人道危機に直面しています。
幼い子ども、家族を守ろうと必死に働く親たち、体力のない高齢者など、レバノンに暮らす難民をはじめ家を追われたすべての人々が、この冬を無事に過ごし春を迎えられるように、日本から温かいご支援をいただきますよう、心よりお願い申し上げます。
氷点下の凍える寒さが、子どもたちの命を危険にさらしています。
どうか今すぐ、温かいご支援をお願いいたします。

UNHCRは2021年の冬が始まるまでに、シリア難民とシリア/イラクの国内避難民など合計約330万人に防寒支援が急務と発表しました。 そのために約205億円の資金が必要ですが、UNHCRは現在深刻な資金不足にあり、このままでは命を守るための防寒支援すら削減せざるを得ない危機的な状況です。どうぞ手遅れになる前に、今すぐのご支援をお願いいたします。
一枚の毛布が、一つのストーブが、凍てつく寒さから難民の命を守ります。
あなたのご支援でできること



※1ドル=106円換算
*皆様のご支援は、UNHCRが最も必要性が高いと判断する援助活動に充当させていただきます。

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