2020年12月UNHCRは、世界で約8,000万人が紛争や迫害で家を追われ、避難を強いられていることを発表しました。実はその膨大な人数の中には、世界でほとんど報道されず知られていない危機「サイレントクライシス」の中で苦しむ難民や国内避難民も多く含まれています。
コンゴ民主共和国、イエメン、ギリシャ・エーゲ海諸島。あなたは、今この3つの国々で深刻な危機が起こっていることを聞いたことはあるでしょうか。激しい戦闘や迫害により家を追われ、命がけで逃れた先でさらに困難に苦しみ追い詰められている人々が、懸命に助けを求めていることをご存じでしょうか。
どうぞ今、この3つの深刻な危機について知ってください。そして、苦しむ難民、国内避難民の声に耳を傾け、そのかけがえのない命を守るために、力をお貸しください。
報道されず知られていない3つの危機「サイレントクライシス」
「暴力がエスカレート、約4万5千人が国境へ」コンゴ民主共和国
「苦しく、つらい道のりでした」
キツザ(25歳)/コンゴ民主共和国
コンゴ民主共和国が直面する危機

長年紛争に苦しむコンゴ民主共和国(以下コンゴ)では、武装勢力等による略奪や拷問、性的暴行などの著しい人権侵害が止まず、約450万人が国内で避難を強いられています。今年5月にも武装勢力による暴力行為が激化し、多くの人々が着の身着のままウガンダ国境へ逃れました。新型コロナウイルスの影響で国境を閉鎖していたウガンダ政府ですが、7月に国境を一時的に開き、3日間で3,000人以上がウガンダへ避難しました。
UNHCRは、パートナー機関と連携して被害者のカウンセリングなど心のケア、医療介入、法的支援などを行うとともに、啓発活動を通じ「性的暴力はいかなる場合も許されない」等のメッセージを、女性たちだけでなく、コミュニティのリーダーの男性たちや一般の人々に対して広げています。
また、部族間対立の遠因が、水をはじめとする資源の確保が原因となることを鑑み、対立を激化させないよう、コミュニティ全般にわたる資源増補を目的とした支援にもあたっています。
450万人 ― 国内で避難する人の数
1,300人以上 ― 戦闘や暴力で亡くなった人の数(2019年10月~2020年6月)
110万人 ― 深刻な栄養不良の子ども(5歳未満)※
※WFP(国連世界食糧計画)
「世界最悪の人道危機」の一つ、イエメン
イエメンが直面する危機

アラビア半島の小国イエメンでは、2015年から内戦が続き、激しい戦闘で多くの住居や学校、病院などが破壊され、365万人以上が避難を余儀なくされています。現在約2,000万人が食料不足に直面し、子どもと女性の栄養不良の割合は世界で最も高くなっています。2020年4月には大雨による洪水で多くの住居が水につかり、深刻な被害を受けました。こうした過酷な状況下で新型コロナウイルスが広がりつつあり、世界的にも高い死亡率となっています。
UNHCRはこうした緊急事態に対し、シェルター支援、緊急援助物資の提供、医療支援など様々なサポートを行うとともに、多くの人が新型コロナウイルスの影響で収入を失う中、現金給付支援にも力を入れています。しかし、苦難が続くこの状況に、UNHCRイエメンの代表ジャン・ニコラ・ブースは「イエメンはもう待てません」と訴えます。「UNHCRは命を救う方法を知っています。しかし、資金が不足しているのです」と。
2,400万人 ― 支援を必要としている人の数
約50% ― 機能していない医療施設の割合
100万人以上 ― コレラの推定感染者
終わらない悲劇 ― ギリシャ(地中海ルート)

ギリシャ レスボス島 難民キャンプ モリア受入センターでの火災につきまして

2020年9月9日未明、ギリシャのモリア受入センターで大規模な火災が発生し、大部分が焼失しました。死傷者は今のところ報告されていませんが、約12,000人の難民などが住まいと持ち物を失い、至急の支援が必要です。
UNHCRは難民の移送、テントや毛布、寝袋などの緊急援助物資の配布、 保護者の同伴のない子どもの保護などの支援を開始しています(9月10日現在の情報)。
ギリシャと地中海沿岸地域が直面する危機

2015年にトルコの海岸で遺体で見つかった、シリア難民の男の子アイラン・クルディくん(当時3歳)を覚えていらっしゃるでしょうか。こうした悲劇は、決して今も終わっていません。中東やアフリカから紛争や貧困を逃れようと、地中海を命がけで渡る人々が今日も絶えないのです。また、保護者と離ればなれになったり、単独で避難の旅をする中で、暴力や人身売買の被害に遭う子どもも少なくありません。
到着してからも過酷な生活が待ち受けています。エーゲ海沿岸のギリシャ・レスボス島の受け入れ施設には、定員をはるかに超える人々が避難しています。
新たに到着した人々へのテントや毛布、寝袋、ソーラーランタン等の物資の配布も急務であり、新型コロナウイルス対策の手洗い場や洗濯用のスペース、トイレ等の衛生施設の修理や増設等に対応するために、さらなる資金が必要です。
28,255人 ― 海路で欧州※へ避難した人(2020年1月~7月)※イタリア、ギリシャ、スペイン、キプロス、マルタ
1,319人 ― 航海中の死者・行方不明者(2019年)
15% ― ギリシャへ到着した人のうち、保護者の同伴のない子ども(18歳未満)の割合
「『 子どもだけは生きてほしい 』と姿を消した難民の女性もいます」
UNHCRジュネーブ本部 上席緊急コーディネーター 白戸純

UNHCRの在ジュネーブ総局のひとつ、緊急対応局DESS : Division of Emergency, Security and Supply)の白戸純と申します。緊急事態への即応準備と対応は、UNHCRの緊急課題の一つで専門分野でもあり、その前身は1991年、緒方貞子元国連難民高等弁務官のもと、湾岸戦争による難民危機をきっかけに創設されました。
ここで、私の心に今も残っている、ある親子のことをお話ししたいと思います。2014年末、私がシリア勤務中に国内避難民キャンプを訪問した時のことです。あるボランティアの女性から「キャンプに教育施設を作ってほしい」と相談を受けたのですが、実は彼女は、母親が失踪した幼児2人の世話をしていると知りました。失踪した女性は夫を紛争で失い頼りにできる人もなく、一人で子ども2人を連れキャンプで暮らしていたそうです。しかし支援だけでは子どもを養えず、キャンプ内で男性の保護がない女性をターゲットにした売春あっせん業者に身を任せ、その結果、コミュニティから疎外されるようになってしまったのです。ある日彼女は、「子どもだけは生きてほしい。私という罪深い人間の手を離れれば、この子たちを助けてくれる人もいるでしょう」。
人道支援の現場で使われる言葉に、「サバイバルセックス」というものがあります。生きる為に必要な食料やサービスを得る為に、自らの意思に反し、また健康等を害するとわかっていながら、性行為を提供することです。ウガンダでも「食料を手に入れる為に、自分の体を売ることができる私は、恵まれていると思いました」と語るコンゴ出身の難民女性と会ったことがあります。
これまでお伝えした3つの危機をはじめ、多くの緊急事態への対応に追われるUNHCRは、現在深刻な資金不足にあることもお伝えしなければなりません。2021年にUNHCRが難民支援のために必要としている資金のうち、2月現在で約13.7%しか集まっていないのです。
資金不足の影響を受けるのは、最も弱い立場にあり、声をあげることすらできない人々です。貧困に追い詰められ、売春して生き延び、子どもを育てている難民すらいます。彼らは他に生きる術がないのです。皆様、今回お伝えした現場の状況をはじめ、世界の片隅で苦しむ人びとの命と尊厳を守るために、どうか皆様のお力をお貸しいただけないでしょうか。UNHCRとともに、世界各地の人道支援を必要とする人びとをサポートくださいますよう、心よりお願い申し上げます。

紛争や迫害で家を追われ、心身に深い傷を抱えながらも懸命に生きる人々が多くいます。
世界的なコロナ禍でも彼らの命を守り、新たな一歩を踏み出す支援ができるように、どうぞ温かいご支援をいただきますよう、心よりお願い申し上げます。
命を救い、笑顔を守るために。
UNHCRは、あなたのご支援を必ず届けます。

1年で、マラリア等の感染症対策に不可欠な蚊帳80家族分

1年で、暗闇の中でも食事や勉強ができるソーラーランタン13家族分

1年で、避難中でも家族と温かい食事がとれる、調理器具セット24家族分
※1ドル=112円換算
- 当協会へのご寄付は、税控除(税制優遇)の対象になります。お送りする領収証は確定申告にご利用いただけます。
- ご支援者の皆様にはメールニュース、活動報告等を送らせていただき、難民支援の「今」、そしてUNHCRの活動を報告させていただきます。
- Webでご寄付いただく際の皆様の個人情報はSSL暗号化通信により守られております。
*皆様のご支援は、UNHCRが最も必要性が高いと判断する援助活動に充当させていただきます。

