ロヒンギャ難民危機
ロヒンギャ難民に迫る、自然災害の危機

ミャンマーのラカイン州北部で起きた暴力行為により、2017年8月以降、79万人以上のロヒンギャの人々がバングラデシュに流入し、未曽有の人道危機となったロヒンギャ難民危機。国境を越えて避難してきたロヒンギャ難民の半数以上は子どもです。ロヒンギャ危機から6年目を迎える現在も、母国に帰って安全に暮らせる見通しがたたない中、人々は心と身体に傷を抱えながらも懸命に生きています。
今、緊急の課題は、すぐそこまで来ているモンスーンの季節に頻発する大雨の自然災害から、ロヒンギャ難民を守るための対策です。UNHCRは、ロヒンギャ難民の命を守る最終的な責任を負う国連機関として、気候変動対策含め、難民キャンプの至る所で豪雨・洪水への対策を進めています。しかし、大幅な資金不足のため、難民キャンプで配給される食料は必要最低限のものに限られており、いまだ5歳未満の子どもの12%が深刻な栄養不良に苦しんでいます。

2023年5月、サイクロン・モカが難民キャンプに上陸

被災地
ロヒンギャ難民キャンプ被災地の様子

豪雨と強風を伴うサイクロン・モカが5月14日、バングラデシュ/ミャンマー国境沿いの沿岸部に上陸。巨大な台風に匹敵する勢力を持つこのサイクロンにより、地滑り等の被害も出ており、バングラデシュでは推定230万人が被災しています。UNHCRのチームはすでに両国の被災地に入り、地元当局、難民、地元コミュニティ、パートナー団体と共に、保護、ニーズの調査、救援物資の手配といった救援活動を開始。多機能チームを配備し、UNHCRが訓練していた難民ボランティアの方々と共に、被災地の最前線で、地滑りの危険がある地域の人々や障がいを持った人々の救助を実施し、救援活動にあたっています。また、救援物資の手配、コールセンターの設置、正しい情報を提供するための緊急通信システム(ラジオ、衛星電話)の強化を実施しています。

UNHCRは伝えます、ロヒンギャの人々の声なき声を

ミャンマーでは多くのロヒンギャの人々がひどい暴力・性暴力を受け、家族の誰かを失いました。

「今、この子は私の命です」ドゥル・ベグム(60歳)私は毎日この孫の男の子を抱いて、面倒をみています。ミャンマーでは、近所の人が銃で撃ち殺されるのを目撃しました。それで家族でこうして逃げてきたのです。「父も母も、行方不明のままです」マフムード(18歳・奥の男性)私たちの村は焼かれ、人々は殺されていました。私も妻も、両親は行方不明のままです。私たち家族は夜の間に小さな舟に乗り、ここにたどり着きました。海岸では2千人から3千人が舟を待ち続けていました。皆、なんとかしてバングラデシュに逃れようと必死だったのです。 「レイプされ、閉じ込められて火をつけられました」ムムタズ(30歳)軍隊に家を焼かれ、村の人たちと川岸に隠れました。でも見つかってしまい、夫を含め多くの人が撃ち殺されてしまいました。その後、子どもたちのうち二人が殺され、私はレイプされたのです。娘のロジエ(7歳)も、なたで頭を殴られました。それから私たちは建物に閉じ込められ、火を放たれて…。この火傷は、その時に負ったものです。「お姉ちゃん、戻ってきて」アジア(10歳)/姉の墓のそばにて 私の姉のカブラは、高い熱を出していました。難民キャンプの病院に運ばれましたが、そのまま亡くなってしまいました。まだ14歳だったのに。お姉ちゃん、どうか戻ってきて。一緒に遊ぼうよ。

※年齢などは取材当時の物です。

ロヒンギャ難民に迫る、モンスーン豪雨の危機

台風のような激しい雨と強風が、竹とビニールシートで作られたシェルターを襲う ― その恐怖は計り知れません。ロヒンギャ難民は毎年、モンスーン豪雨による自然災害の危機に直面しています。

「水位がどんどん上がってきて、気付けば家へ戻ることができなくなっていました。所持品のほとんどが一瞬で流されてしまいました。」

洪水被害にあった難民キャンプの様子
地滑りでシェルターが流されている様子

息子夫婦と共にロヒンギャ難民キャンプに住むメヘルさん(60歳)は、モンスーンによる豪雨で4年以上住んでいたシェルターが流されてしまいました。数時間のうちに胸元まで水位が上がってきたため、一家はわずかな所持品だけを持って避難しました。
「とても無力に思えました。浸水した家に残したものが心配です。いつ雨がやみ、家に戻れるのかわかりません。」
ロヒンギャ難民が暮らすバングラデシュは、自然災害の影響を最も受けやすい国の一つです。モンスーンの季節に毎年発生する洪水や土砂崩れなどにより、難民キャンプは甚大な被害を受けています。

厳しい環境下でも、ロヒンギャの人々は懸命に前へ進もうとしています

UNHCRバングラデシュ コックスバザール事務所 准フィールド担当官 本田悠里

本田悠里職員
本田悠里職員

兵庫県出身の私が初めて難民の存在について知ったのは、高校時代の現代社会の授業でした。6歳の時に阪神淡路大震災で避難生活を体験した私にとって、紛争や迫害で避難を強いられた難民の境遇は、自分の体験と共通するものを感じました。

私が担当するキャンプ内の相談受付窓口では、毎日多岐にわたる相談が寄せられます。人々が口をそろえて話すのは、将来への不安です。長引く避難生活の中で今後の見通しがたたないまま時間だけが経過し、政情不安が続くミャンマーに帰ることもできず、世界から忘れ去られてしまうのではないかという強い不安を皆抱いています。

不安な避難生活の中でロヒンギャの人々をさらに苦しめるのは、毎年訪れるモンスーンによる自然災害の危機です。コックスバザール県では雨季を迎え、激しい雨と強風が長期間にわたって続き、難民キャンプは甚大な被害を受けます。被害を大きくする原因の一つに、シェルターの素材があります。難民が住むシェルターは、竹の骨組みにビニールシートを被せただけの作りとなっているため、激しい雨や強風に耐えることができません。また浸水リスクの高い低地でも住居が密集しているため、シェルターが洪水で破壊され流されてしまうことや、子どもや高齢者、障がいのある人が溺れて命の危機に晒されることもあります

キャンプ火災の様子
2023年3月の大規模火災。乾季の過密な避難生活では、常に火災の危険がつきまとう

ロヒンギャの人々の苦難は、これだけにとどまりません。2023年3月5日にクトゥパロン・バルカリ難民キャンプで発生した大規模火災では、約3000戸以上のシェルターと155施設以上の病院や学習センターなどが被害に遭い、1万6000人以上が家を失いました。

日本も台風や地震など、災害が非常に多い国です。私も阪神淡路大震災で被災し、避難所生活の中で食料や水、また小学校に入学する直前だったため、ランドセルや文房具なども支援でいただきました。こうした支援をいただいた経験が、私の日々の難民援助活動の大きな活力になっています。

どうか、シェルターが暴風雨で飛ばされてしまうのではないか、洪水で流されてしまうのではないか、火事で焼けてしまうのではないかと不安を抱くロヒンギャの人々に、救いの手を差し伸べていただけないでしょうか。ロヒンギャの人々の命を守るために、皆様の温かいご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

UNHCR(国連高等難民弁務官事務所)は、 難民の命を守り、保護する機関です。
緒方貞子さんとルワンダ難民
ルワンダ難民を訪問する緒方元高等弁務官
UNHCRは、シリア・アフガニスタン・ウクライナなど世界中で家を追われた難民・国内避難民を支援・保護し、水や食料、毛布などの物資の配布や、難民キャンプなど避難場所の提供、保護者を失った子どもの心のケアなど、最前線で援助活動に尽力しています。1991年から10年間、緒方貞子さんが日本人として初めてUNHCRのトップである国連難民高等弁務官を務めました。 
※紛争や迫害などのため命の危険があり、国外へ逃れた人を「難民」、国内で避難している人を「国内避難民」と呼びます。

資金不足が解消されなければロヒンギャの人々に下記のような影響が及びます

洪水時の難民ボランティアの活動の様子
難民ボランティアによるレスキューの様子

緊急時に人々の命を守る難民ボランティアへの訓練の実施に影響が出る

キャンプでは洪水などの緊急時に初動対応を迅速に行うため、ロヒンギャ難民で構成されたボランティアチームを結成しています。冒頭のアスミダさんも、ボランティアの一人です。日本でも地震に向けた避難訓練を平時から行っているように、UNHCRは難民ボランティアと共に、モンスーン対策として災害救助訓練を平時から行っています。彼らは洪水が発生した際に溺れる人を救助し、また低地に住む人を高地にある避難用シェルターに移動させるなど、人々の命を守る重要な役割を担っています。しかし資金が不足してしまうと、こうした訓練を実施することが難しくなります。

シェルター支援の様子
モンスーンに備えてシェルター土台の補強を行う様子

シェルターの修繕・補強に必要な資材が届けられなくなる

竹とビニールシートのみで作られたシェルターの補強、そして現在壊れている箇所の修繕は不可欠です。UNHCRはシェルター補強用の鉄骨基礎やロープを難民に提供し、豪雨や洪水が発生してもシェルターが流されてしまわないよう土台の補強を行っています。補強工事は急斜面などのリスクが高いところから優先的に行う必要がありますが、資金が不足するとこうした支援をキャンプ全体に届けることが難しくなります。また道路や橋の補強などのインフラ整備も急務です。

免疫力の弱い子どもたちを感染症から守ることができなくなる

モンスーンの時期には衛生状況が悪化することから、皮膚病や結膜炎、急性水様性下痢症などの感染症が流行することも課題の一つです。栄養状態が不十分な上、免疫力の弱い子どもたちの間で感染症が流行した場合、命に危険が及びます。UNHCRは栄養センターや栄養状態を観察するためのセンターを設営し、約400名の難民ボランティアによるコミュニティへの啓蒙活動、急性栄養不良者への食料支援プログラムなどに取り組んでいます。

UNHCRが届ける援助物資

洪水時のキャンプの様子
洪水時の難民キャンプの様子

栄養補助食品とは?

重度の急性栄養不良を治療するために作られた、エネルギー密度の高いミネラルとビタミンを補給できる食品です。柔らかく、水なしで生後6か月の子どもから食べることができます。

モンスーン対応キットとは?

モンスーンによる豪雨や洪水でシェルターが流されてしまわないように、土台を補強するためのロープやワイヤー、鉄くぎなどの物資が含まれています。

防水シートとは?

あらゆる気候のもとで長期間の屋外使用に耐えるように設計された、プラスチック製のシートです。雨漏りや浸水から、難民の住居を守ることができます。

皆様の今すぐのご支援が、自然災害のリスクから、ロヒンギャ難民の命を守ります。

豪雨による地滑りや洪水は、竹とビニールシートで簡易的に作られたシェルターに住む多くのロヒンギャ難民の命を危険にさらします。またモンスーンの時期に、衛生状況の悪化から感染症が蔓延することも課題の一つです。さらにモンスーン時期以外の乾季には火災が頻発しており、難民キャンプに甚大な被害をもたらしています。

例えば15,000円で、モンスーン対応キットを20家族に届けることができます。皆様のご支援は、確実にUNHCRが難民に届けます。地震や台風など自然災害に直面することが多い日本の皆様から、自然災害に怯えるロヒンギャ難民にどうかお力を貸していただけないでしょうか。どうぞ温かいご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

皆様のご支援でできること

9,000円 のご寄付で
雨漏りや浸水から難民を守る防水シート(4枚分)
15,000円 のご寄付で
モンスーン被害から難民を守るモンスーン対応キット(20家族分)
27,000円 のご寄付で
栄養不良の子どもを守る1か月分の栄養補助食品(9人分)

※1ドル=144円換算

  • 当協会へのご寄付は、寄付金控除(税制上の優遇措置)になります。お送りする領収証は確定申告にご利用いただけます。
  • ご支援者の皆様にはメールニュース、活動報告等を送らせていただき、難民支援の「今」、そしてUNHCRの活動を報告させていただきます。
  • Webでご寄付いただく際の皆様の個人情報はSSL暗号化通信により守られております
皆様からのご寄付によって 多くの命が助かります。
水・食糧の供給から住居、医療、教育まで、長期的に難民を 支えるには、毎月のご支援が欠かせません。ぜひ、ご検討ください。
水・食糧の供給から住居、医療、教育まで、長期的に難民を 支えるには、毎月のご支援が欠かせません。ぜひ、ご検討ください。
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