もしも避難中に家族の具合が悪くなったら
難民の健康を守りたい―UNHCRの難民援助活動

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は難民の健康を守ることを重視しています。
ではUNHCRは難民の健康をどう守ろうとしているのでしょうか?UNHCRの主な施策や方針をお伝えします。

〈イエメン〉 お父さんに連れられて病院に来たソマリア難民のファティマちゃん(1歳2か月)

産科の緊急ケアから慢性の糖尿病の治療まで。健康について難民は様々な困難に直面しています。

〈イエメン〉 お父さんに連れられて病院に来たソマリア難民のファティマちゃん(1歳2か月)

1. 避難中に受ける身体的・精神的なダメージ

女性や子どもが暴力にさらされるリスクが高まります。しばしば武力紛争に関連して死傷者が多く出ます。

2. 避難先で医療をなかなか受けられない

距離、言語、費用、国の政策、差別など様々な理由によります。

3. 非感染性疾患・栄養失調などの長期治療が中断されがちになる

4. 骨折のような深刻な怪我の治療をなかなか受けられない

難民の罹患率の高い疾病 1 上気道感染症 18% 2 マラリア 17% 3 下気道感染症  6% 難民の死因 1 新生児死亡 31% 2 マラリア 8.3% 3 感染症 5.6%

※調査年度:2019年 ※調査対象:難民総合医療情報システムを活用している20か国
※出典:UNHCR Annual Public Health Global Review 2019

緊急事態における死亡や疾病の主な原因はワクチンで防げます
5歳未満の子どもが最も危険な状態にあります。

UNHCRは難民の健康をどう守っているの?

難民に対する健康分野の援助の主体は受け入れ国です。

UNHCRは世界保健機関(WHO)、国連世界食糧計画(WFP)、国連児童基金(UNICEF)、国連人口基金(UNFPA)など国連の諸機関や様々なパートナー団体と協働して難民の健康を守るため下記の6分野を中心に受け入れ国の難民援助活動を支えています。


〈南スーダン〉 UNHCRの栄養調査チームによる貧血の検査を受けるスーダン難民のヤシンくん(4歳)と笑顔で見守るお母さん

難民が医療を受けられるようにする 心のケアと心理社会的サポート ジェンダーと出産サポート・HIV対策 栄養と食料供給 水と衛生 医療に関するデータ収集と分析

2021年、コロナ禍が各分野に大きな影響を与えています。UNHCRは新型コロナ感染症の感染予防を最優先としながら、必要な他の援助を継続するよう工夫を重ねながら活動しています。

健康を守りたい UNHCRの難民援助活動

難民が医療を受けられるようにする

難民が持続的に医療を受けられるようにするため最も大切なのはいかに「受け入れ国の医療制度」に難民を含めるかということ。

UNHCRはすべての難民が医療サービスを受けられるよう各国政府、関係機関などと緊密にやりとりしています。

  • 医療計画・施策の対象に難民を含んでいる受け入れ国(2020年1月調査)…約68%注1
  • 国民健康保険制度があり、その対象に難民を含んでいる受け入れ国(2020年調査)…約27%注2

注1:出典 Annual Public Health Global Review 2019 P8 Inclusion / 調査対象 難民受け入れ国48か国
注2:UNHCR GLOBAL REPORT 2020 P205

また受け入れ国の医療を様々な形で援助しています。

  • 初期医療の提供と二次医療(入院・専門外来)への照会
  • 医療施設の建築・改修、医薬品・医療機器などの提供
  • 地域の医療従事者のトレーニング(診断・治療・紹介、妊婦や新生児あるいは慢性疾患の患者の経過観察など)
  • 非感染性疾患(心臓病、がん、糖尿病、慢性的な呼吸器疾患、精神疾患など)および感染性疾患の予防と治療
  • 予防接種(はしか、ポリオ、破傷風など)のサポート

支援の現場から イラク 国内避難民の子どもへのポリオの予防接種を支援しています

UNHCRがイラクで支援するクリニックでは国内避難民の子どもへのポリオの予防接種を実施しています。
注射ではないと知って安心したナザさん(3歳)。

心のケアと心理社会的サポート

軍事衝突、迫害もしくは自然災害などで避難を余儀なくされると、深刻な心理的ストレスにさらされます。

さらに避難先での慣れない生活は精神的な負担になります。うつ、不安神経症、双極性障害、精神障害といった心の病を抱えた難民はその治療にあたって大きな壁に直面します。

避難先の大半において心のケアができる専門家は常駐していないか、ごく一部しか対応できません。特に子どものための専門家が不足しています。

UNHCRは難民コミュニティとの連携を重視しながら状況の改善を図っています。

  • 公的な医療制度における初期医療に心のケアを組み込むよう国・自治体へ働きかける
  • 医療提供者の専門的トレーニングの推進、難民の子どもの心理社会的サポート(レクリエーション、生活技能活動の実施など)
  • 保護者への情報提供および相談機会の提供
  • ジェンダーに基づく暴力の被害者など深刻な状態の難民に対する心のケア
  • アルコール・薬物中毒の予防
  • 帰還民に対する帰国前後の不安定な時期の心理サポート
  • 電話相談などリモートのカウンセリング機会の強化

支援の現場から リビア 庇護希望者にカウンセリングを行っています

リビアでは UNHCRは庇護希望者にカウンセリングの機会を提供。
スーダンから避難してきたシャディアさん(右)もカウンセリングを受けています。

ジェンダーと出産サポート・ HIV対策

様々な性別の人が健康に暮らし、女性が安全に出産できることは、人間の幸福においてとても重要です。

「妊婦と新生児のケア」は、この分野の援助活動の中心です。「新生児死亡」は、5歳未満の子どもの死因の中で大きな割合を占めています。また「妊産婦死亡」も引き続き懸念されています。

「ジェンダーに基づく暴力」の被害者に対する治療・ケアも重要です。しかし多くの国では報告率が非常に低いという問題があります。被害者がアクセスしやすくするため、安全で秘密が守られた医療サービス提供、スタッフ・コミュニティの意識向上、スタッフの継続的トレーニングなどが必要とされています。

  • 妊婦と新生児の死亡を減らすため経験豊富な助産婦の立ち会い促進
  • 助産婦や医療従事者のサポート(トレーニング、医薬品・医療機器を含む物資援助)
  • 出産前と出産後ケア(産後の家庭訪問など含)
  • ジェンダーに基づく暴力の被害者の臨床管理
  • 中絶に関連する合併症の管理
  • ジェンダーや出産に関する情報をきちんと提供する
  • 子宮頸がんの検査と治療
  • HIVの治療と予防

支援の現場から ケニア 無事お産ができるよう妊婦をサポートしています

UNHCRはケニアで出産をサポート。カクマ難民キャンプでブルンジ難民のエリアナさん(23歳)も無事お産を終えました。生後1日のクリステナちゃんはすやすや眠っています。

栄養と食料供給

難民は様々な形の栄養失調に悩まされていますが、パンデミック下の経済的困窮や移動の制限で、状況はさらに悪化しています。

食料不足は、人々を性的虐待や性的搾取に遭いやすい状態に置きます。 質の低い食生活と、ビタミン及びミネラルの欠乏は、子どもの成長を遅らせ、取り返しのつかないダメージを与えます。

さらに、HIV/エイズのような慢性疾患を抱える人々にとって、充分な栄養を得ることは、免疫システムを維持する上で必要不可欠です。

  • 受け入れ国の公的な「健康・栄養サービス」「食料関連制度」に難民を含めてもらうよう働きかける
  • 助産婦や医療従事者のサポート(トレーニング、医薬品・医療機器を含む物資援助)
  • 栄養失調を患う5歳未満の子どもたちを対象とした栄養補給プログラムや外来セラピーの実施
  • 難民キャンプにおける多層式菜園の展開

支援の現場から エクアドル 避難民に無料で食事を提供しています

エクアドルではWFPと連携し、コロンビアやベネズエラから避難してきた人達に無料で食事を提供しています。

水と衛生

未処理水や不衛生な環境など、難民は過酷な環境で暮らさなければならないことがあります。それは、難民の健康や教育、生計を危険にさらします。

新型コロナウイルス感染症の予防策としての重要性の高まりもあり、UNHCRは現在この分野の援助を強化しています。

  • 受け入れ国の「水と衛生」の制度に難民を含めるよう働きかける
  • 水の供給(運送・保管・処理含む)
  • トイレやシャワー・入浴施設の設営もしくは提供(安全性の高い家庭内設置を含む)
  • 廃棄物処理支援
  • 石鹸、洗浄剤、衛生用品の提供
  • 害虫の抑制・駆除の促進
  • 水と衛生に関する教育、スタッフへのトレーニングなどの提供
  • 太陽光エネルギーなど再生可能エネルギーの活用

支援の現場から スーダン 難民キャンプに水を提供しています

UNHCRはスーダンのツナイダー難民キャンプで2万人の難民に水を提供しています。

医療に関するデータ収集と分析

効率的に適切な援助活動を行うため、UNHCRは医療に関するデータ収集と分析を行っています。

難民総合医療情報システム(iRHIS) ※サイト(英文)はこちら
UNHCRが構築した情報システム。難民の居住地域における医療サービスに関するリアルタイムデータを収集、分析とタイムリーな報告・意思決定の円滑化を図っています。現在UNHCRはこのシステムの強化に力を注いでいます。

以前は紙/Excelベースでした。しかし2021年現在、このシステムを活用している20か国の大半において、各自がタブレットにアプリをインストールして、データを入力して活用する形に移行しています。

電子版「医療施設 品質評価ツール」
医療サービスの質のモニタリングを標準化し、不足箇所を特定して是正措置を講じます。このツールはiRHISで報告される指標以外の追加情報を提供しています。すでに12か国で活用されています。

難民の「医療サービス活用調査」
難民がどのように医療サービスを活用しているか、また活用状況には何が影響しているかなどを難民に聞き取り調査しています。

支援の現場から バングラデシュ 訪問して情報をやりとりしています

ロヒンギャ難民のサイダルさん(左)は、コロナ感染防止のために情報提供しながら、同時に聞き取り調査を行うボランティア活動を行っています。こうして集められた情報が援助活動の基礎情報となります。

あなたのご支援は ――

例えば難民が病院の専門外来で受診する費用

1万3000円で1人分
3万9000円で3人分
6万5000円で5人分

※1米ドル=106円換算

皆様からのご寄付によって 多くの命が助かります。
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