UNHCRはどうして緊急支援に強いのか

UNHCRは緊急事態に何をするのか?緊急援助物資を届ける 援助活動を迅速に行うため予算措置を行う 人々の安全を守るため訓練済みの職員を派遣する

72時間以内に「人」と「物」を現地へ送り出す

緊急支援は「初動対応のスピード」がきわめて重要です。
UNHCRでは緊急事態発生から72時間以内に「人」と「物」を現地に向けて送り出す体制を常に整えています。

緊急支援をサポートするプロ集団 「DESS」

援助物資を積み込む職員
【ヨルダン】 大地震で被災したシリア北西部に向けた援助物資を積み込む職員。援助物資の備蓄もDESSの管轄です。

DESSとは「緊急事態・保安・供給局」の略称*1です。DESSは、世界のどこで緊急事態が発生しても、UNHCRの職員が安全かつ迅速に援助活動できるよう、緊急支援に関してUNHCRの組織としての戦略的な方向性を策定し、地域局や各国事務所による援助活動を支援しています。

[*1]DESS : Division of Emergency, Security and Supplyの略称

具体的には主に以下のような任務を担っています。

  1. 緊急時に派遣できる人的資源の準備(職員の事前訓練、「待機職員名簿」の管理)
  2. 緊急時に供給できる物資の準備(サプライチェーンの管理)
  3. 遠隔地やリスクの高い地域での職員の安全確保

局全体でおよそ150名程度が所属しており、ジュネーブ本部とハンガリーのブダペストに事務所があります。その中でいちばん人数が多いのはブダペストにある物資の供給・管理を担当する供給局です。

DESSは3か月ごとに7つの地域局と個別会議を行い、地域ごとにリスク分析を行います。「緊急事態が起こるリスクが高い」と認められた国に対しては、当該国のUNHCR事務所が当該国の政府やパートナー団体と連携して「緊急時対応計画」を作成します。DESSと地域局はその計画作成をサポートします。

訓練した職員を現地へ UNHCRの緊急派遣
――多彩な人材を登録した「待機職員名簿」がカギ

実地訓練
【ドイツ】 緊急対応チームの事前訓練の様子(実地訓練)。
座学
【ドイツ】 緊急対応チームの事前訓練の様子(座学)。

UNHCRは緊急時に各地に適切な人材を派遣できるように「待機職員名簿」を作っています。この待機職員名簿のシステムも1991年後半~1992年初頭、緒方貞子元高等弁務官時代にUNHCRで始まった仕組みです。

現在は可能な限り、経験、職能プロフィール、人数などの面でバランスの取れた緊急対応チームを短期間で手配できるよう、様々な取り決めや考案のもと数種類の待機職員名簿が作成されています。この待機職員名簿に登録されている職員は事前訓練を受け、緊急時に要請があれば72時間以内に現地へ出発できるよう待機しています。

緊急事態宣言*2が出された場合、当該国のUNHCR事務所は緊急派遣をDESSに要請できます。

[*2]緊急事態宣言:UNHCRの緊急事態宣言は「準備体制を強化し、支援規模を拡大するために用いる期間限定の内部メカニズム」です。

戦略拠点から世界各地に 必要な物資を届ける
――援助物資を「最大100万人」に提供可能

UNHCRの主要倉庫の地図

緊急事態に即座に活動を開始し、迅速に支援を提供できるようにするためには、緊急支援用の物資をスタンバイしておくことも重要です。

緊急支援に物資が必要な場合、当該国のUNHCR事務所及び地域局はDESSに要請することができます。

UNHCRは緊急援助物資、保安用具、そのほか援助活動に必要な物資を世界各地の戦略拠点の倉庫に備蓄しており、DESSは要請を受けてから72時間以内に現地に向けて発送します。

2024 年現在UNHCRは新たな緊急事態において最大100万人のニーズに対応できるよう、必要不可欠な品目の緊急備蓄を維持し、定期的に見直し、最適化しています。

UNHCRのテント

主な援助物資

家族用テント

身体を休められる場所を提供します

【ケニア】ブルンジの紛争から逃れてきたサラフィナさん(30歳)と娘さん「何が起こるか心配せずに夜眠りたいです」

UNHCRの援助物資ト

主な援助物資

毛布・水汲み容器・キッチンセット(簡易な調理器具と食器)ほか

何も持たない難民が生活に必要な基本物資を提供します

【スーダン】 2024年4月末時点で約679万人が国内で避難生活を余儀なくされているスーダン。約2万5000人が避難しているワディ・ハルファに届いたUNHCRの緊急援助物資。

緊急支援を大幅改革した緒方貞子元難民高等弁務官

緒方貞子元難民高等弁務官
緒方貞子元難民高等弁務官 (1991年1月撮影)

UNHCRの緊急支援や準備の仕組みが大きく変わったきっかけは1991年にイラクで起こったクルド難民危機でした。

わずか1週間の間にイラク北部から周辺諸国やイラク=トルコ国境沿いにクルド人175万人が避難するという前例のない規模・スピードの難民危機。

1991年2月に難民高等弁務官に就任したばかりの緒方さんは事態発生の報告を受け即座に現場に赴くと共に、あらゆる手を尽くして支援のスピードを上げました。

緒方さんはこれらの経験から「緊急事態に対応するUNHCRの能力強化」を優先事項としました。UNHCRは1991年10月に緒方さんによって創設された「緊急事態タスクフォース」のもと改革を進めました。

中でも注力したことの一つが「待機能力の確立」でした。1991年後半から1992年初頭にかけて、緊急時の人員配置、援助物資、現地のニーズ評価、緊急プログラムの実施など各分野における「待機能力の確立」に焦点を当てた取り組みが行われました。

緒方さんは当時を振り返り、のちにこのように語っています。「難民問題で重要なのは初動態勢なのです。最初期の対応こそが一番重要ですから」(『聞き書 緒方貞子回顧録』*3より)

[*3]野林健・納家政嗣(編)『聞き書 緒方貞子回顧録』岩波書店、2016、p.137

この緒方貞子元難民高等弁務官時代の改革によりUNHCRの緊急時の対応能力は飛躍的に向上しました。

緊急支援準備担当にきいてみた

入山由紀子職員
(UNHCR緊急対応・保全・供給局 緊急準備・要員配備・パートナーシップ部門チーフ)

Q1 入山職員が思う『UNHCRの強み・特長』は?

帰還した人々を出迎えるUNHCR職員
【アフガニスタン/カンダハル州】 パキスタンとの国境通過ポイントで緊急帰還した人々を出迎えるUNHCR職員。

やはり「現場にいる」ことだと思います。難民の緊急事態はだいたい国境地帯から始まります。あまり他の組織がいないところにも多くの場合UNHCR の職員は現地にいます。

既に現地にいることによってUNHCRの職員は地域のコミュニティと信頼関係ができていたり、状況を把握しています。それにより緊急時に迅速に現場のニーズを正確にくみとり適切な支援を行うことができます。

Q2 UNHCRはなぜ職員を「72時間以内」に緊急派遣することを目指しているの?

「72時間以内」というのはUNHCRにとって「現実的な目標時間」です。

緊急事態が発生した場合、大体はUNHCRの活動拠点が既にその国の中にあります。国内の物資や職員を現地に送るのが最も速く調整もしやすい。しかしこれは短期の緊急事態に対する臨時措置です。

そこで緊急時に現地に駆けつける「訓練を受けたUNHCR職員」を登録している「待機職員名簿」に載っている職員を選抜して緊急派遣するのです。

しかし、この待機職員名簿に載っているUNHCR職員は世界各国にいます。ときには現場で必要な人材が地球の反対側にいる場合もあります。それを考慮に入れて「72時間以内」というのが「現実的な目標時間」となっています。

Q3 職員の緊急派遣を手配する上で大変なことはどんなことでしょうか。

2022年ウクライナ危機が起こった際には緊急派遣の要請が非常に多く、待機職員名簿に載っているUNHCR職員をほぼ全員派遣しましたが、それでも人が足りずに、UNHCR本部や世界各地のUNHCRの事務所からも追加で職員を派遣しました。

手続きを説明するUNHCR職員
【チャド】 スーダンから避難してきたカディジャさん(72歳)に緊急援助物資を受け取る手続きを説明するUNHCR職員。

2023年スーダン危機の際も、各国の現場から様々な要請が次々に寄せられました。「シェルターの専門家」「公衆衛生のプロでフランス語が堪能な職員」「子どもの保護の専門家」「人事のプロ」など。

現場で必要な人材は緊急事態ごとにまったく異なります。どういう要請が来てもその要請に応えられるような、様々な専門分野、語学能力、職能を持った職員の待機職員名簿をいかに準備できるか。そして事前訓練の実施も含めてその待機職員名簿をいかに維持し続けるか。そこがいちばん苦心するところです。

なお、いざというときに外部のパートナー団体にも派遣要請ができるようにあらかじめ取り決めを締結したり、そのパートナー団体の職員に対して事前訓練を実施することも重要です。

Q4 緊急派遣の場合、どんな職能の職員への要請が多いでしょうか?

意外と多いのが「物資の手配に強いサプライ担当」の派遣要請です。緊急時には物資を急いで現場で手配しなければいけないので。

Q5 緊急派遣される職員が受ける「事前訓練」はどのようなものでしょうか。

事前訓練の中でも代表的なトレーニングがWEM*4です。これは「緊急対応チーム」という待機職員名簿に登録されている職員向けに行う訓練です。

[*4]WEM : Workshop on Emergency Managementの略称。

実地訓練もまじえて、現地に行く前の段階から、活動が終わって後任者に引き継ぐところまで、緊急支援におけるすべての段階で気を付けることや具体的なヒントなどを学び、いつでも現場に行けるような準備を整える訓練となっています。

実地訓練では「難民が突然やってきた」というようなシナリオを基にシミュレーションを行います。

検問があったらどう武器を持った軍隊に対応するべきか。避難してきた人が何を必要としているかをどう迅速にくみとり、支援につなげるか、など。ボランティアの方々が難民役を演じてくださったりしてリアルな場に身を置いて学びます。

【ドイツ】緊急対応チームの事前訓練の様子(実地訓練)。

現在は実地訓練が1週間、オンラインの座学が3日間の計10日間のプログラムで、訓練を終えて修了証をもらって初めて待機職員リストに登録されます。

この訓練には世界各地の職員が集まります。そこで「チーム作り」も学びますし、お互いの知識を交換できる良い機会にもなっています。

入山職員からメッセージ

入江職員

UNHCRの活動に関心を持っていただき、本当にありがとうございます。

緊急事態が多く発生している今の世界情勢の中で、人道支援に寄せられるご支援は本当に貴重です。

実際の現場では「毛布1枚」で助かる命もあります。皆様おひとりおひとりのサポートは大きな意味を持っています。

難民は本当に少ないものをシェアしながら粘り強く生きています。故郷に帰れるときの輝く笑顔、子どもが保護されたときや、離れ離れの家族が再会したとき…いつもどこに行っても難民の姿に心を動かされます。

そういった難民の方々に支援をお届けできているのも日本の皆様のお力添えのおかげです。あらためてご支援に深謝申し上げます。

引き続き難民を共にお支えいただけますなら嬉しく存じます。

あなたのご支援は ――

たとえば 難民が食事するための「キッチンセット」※簡単な調理器具と食器
20,000円で5家族分

たとえば 難民が身体を休められる「家族用テント」
59,000円で1張り
118,000円で2張り

※1米ドル=149円換算

皆様からのご寄付によって 多くの命が助かります。
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