

日本教育新聞「世界難民の日」企画特集 2006年6月19日(月) 緒方貞子第8代国連難民高等弁務官からの寄稿
2000年の国連総会が6月20日を「世界難民の日」と定めて以来、この時期には、難民問題に関する催しが世界各地で企画されるようになりました。紛争、テロ、エイズ、環境破壊など、地球規模で取り組むべき様々な問題がありますが、そのひとつが難民問題なのです。
私は、1990年代の10年間、国連難民高等弁務官として、難民や避難民として故郷を離れなければならない人々の問題に直接関わりました。東西冷戦後の世界では、バルカン半島やアフリカ各地などで民族、部族、分離独立をめぐる武力紛争が起き、UNHCRはその犠牲者への援助活動の先頭に立ちました。今もなお世界各地に、犠牲者を生み出す紛争や迫害があり、戦禍からの復興に苦労している人々がいるのです。
国連難民高等弁務官時代の緒方貞子さん。
1995年、コンゴ民主共和国(当時ザイール)にて
ルワンダ難民の子どもたちと共に。
日本にいると、残念ながらこのような世界の動きを現実のものとして感じる機会はきわめて少ないように思います。日本国内でも貧富の格差が広がりつつあると言われていますし、移民や外国人労働者の差別や権利の問題が取り上げられる機会が増えています。
しかし、一般的には恵まれた暮らしをしているため、世界的に関心をよんでいる社会的、政治的問題に対する意識が育ちにくいのかもしれません。だからこそ、日本人は進んで世界各地にある厳しい状況に関心を寄せ、そこに身を置く努力をしなければならないのではないでしょうか。
私もアフリカと関わりを持ったのは、難民高等弁務官になってからです。この仕事に就かなければ、アフリカ諸国の現実を知ることもないままに、生きていたかもしれません。
世界の様々な出来事に身をさらさなければ、現実感、そして人々との連帯感を持つことは難しいものです。現場に出て、初めて問題点がくっきりと見えて来たという経験を私は何度も味わいました。私は、国の内外を問わず、自分で歩いてみることを若い世代にもすすめます。
日本だけが平和でいられる時代ではありません。相互依存が深まる世界では、遠い国の出来事でも自分たちに影響するということを認識しなければなりません。人間が生きるうえで一番大切なことは、人生という与えられた時間の中で、自分を充分に活かして生きていくことだと思います。誰もがそんな人生を送れるように、みんなが地球に共に生きる人間どうしの連帯感を持って、どこかで苦しんでいる人にも思いを寄せていくことが大切なのです。
「世界難民の日」が、難民の人々が置かれた厳しい状況に目を向け、一人ひとりができることから難民支援に関わる機会となれば幸いです。
















