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疑念と希望を抱え故郷の選挙を見守るイラク難民

ダマスカスで語学の授業を受けるイラク難民。翌週末イラクで行われる選挙を熱心に追う。紛争や宗派間闘争によってふるさとを追われた他の多くのイラク難民と同じように、ムルタダ(Murtada)さん(26歳)は、2010年3月7日に行われるイラク総選挙により、何十万人ものイラク難民が中東の受け入れ国から安全にふるさとに帰還できるよう、イラクの治安が回復することを望んでいます。

ヨルダン、レバノン、シリアそしてエジプトにいるイラク難民の間では、近日中に行われるイラク総選挙に参加するかどうか意見が分かれています。この選挙で、自分たちをイラク国外に追いやってしまった拉致や殺害、自爆テロに終止符を打つことができるかどうか懐疑的なイラク難民も多くいます。

多くのイラク難民は、難民受け入れ国に残ること、もしくは第三国への再定住を望んでいます。安全が保証されない、不安定な状況のイラクへ戻ることは、多くのイラク難民にとって選択肢の一つではないのです。

「もしイラクが安全だったら今日にでも戻ります。残念なことにイラクの治安は危険なため、イラク国外で避難場所を探すしか方法がないのです。選挙により治安が改善されるとは楽観的に考えてはいませんが、私の1票に効力があり、これが変化につながることを望んでいます」と、レバノンに避難するイラク難民のムルタダさんは話しました。

脅迫と暴行のため、ムルタダさんは2004年にレバノンに逃れ、ベイルートのUNHCR事務所で難民登録を行ないました。

「第三国での再定住の望みを失い、居住許可のないレバノンで厳しい状況に直面していたため、2009年に危険を承知でイラクに戻りました。1週間後には拉致され暴行を受け、1ヵ月後には妻を自爆テロで亡くしました。再び避難して、イラクが安全になるまで戻らないことに決めました」と彼は言います。

2009年末のUNHCRの記録では、シリアに避難する21万人以上を含むイラク難民約30万人が難民登録を行なっており、彼らがまだその地域にいるのは確かだと思われます。うち19万人近くが投票権をもつ年齢です。その上、何十万人もの人々が様々な理由からUNHCRでの登録作業を行っていないため、実際のイラク難民数は更に多いと受け入れ国政府情報筋は指摘しています。

これまでに約3万5000人のイラク難民がアメリカやヨーロッパに再定住しましたが、これが全ての人にとっての解決策ではありません。多くの難民はふるさとに戻れるようイラク国内の治安が回復するのを待ち続けることでしょう。

イラク選挙管理委員会からの要請をうけ、UNHCRは近隣諸国に避難しているイラク難民の選挙への参加を支援する準備を整えていると話しました。イラク難民の投票が、民族和解を確立するための重要な鍵となると考えられているからです。

「管轄権のあるイラク当局と受け入れ国政府との密接な協力関係により、UNHCRが行なう必要のある支援は、登録しているイラク難民の人口統計データを提供すること、難民に選挙権があることを知らせること、そして円滑で秩序のある選挙の進行のために必要な後方支援をすることに限られます」とイラクから要請を受けた後、メリッサ・フレミング(Melissa Fleming)UNHCR報道官はジュネーブでジャーナリストに話しました。

3月のイラク総選挙は、国が民主化して平和に向かうか、もしくは民族間や宗派間闘争に後戻りしてしまうかどうかが問われるテストのひとつです。治安は不安定なままです。選挙に先立って暴力事件が増加している地域もあるため、アメリカは2010年の半ばまでにイラク駐留アメリカ軍の配置を調整する計画です。

「私は今回の選挙に参加しません。投票して何が得られるというんだ。何もないというのに」と、シリアに住むイラク難民のハイダール(Haidar)さん(60歳)は話しました。憤慨し張り詰めた様子の彼は、この選挙がイラクの治安情勢を改善することに懐疑的でした。「この選挙によって我々が国に戻れるようになるとは信じられない。こんな不安定な状態のイラクには戻るつもりはない」と彼は続けました。

異なる国々に暮らすイラク難民は、帰還した際の最大の脅威として宗派間闘争を挙げています。受入国での暮らしはほとんどの場合厳しい状態にもかかわらず、ふるさとに戻るのは危険すぎると話します。

イラクでの経験や愛する人々を奪われた暴力によって、多くのイラク難民は心に深い傷を負っています。UNHCRは地元のパートナー機関と共に、多くのイラク難民へ精神的・身体的健康のための支援を行ってきました。

ベイルート郊外で行われたイラク難民とUNHCRコミュニティサービス・オフィサーとのミーティングでは、難民が直面している問題やその解決方法について話し合いました。第三国での再定住を通じての保護が彼らの要求のトップで、続いて経済安全保障、子どもたちへの教育と医療ケアが懸案事項として上がりました。

「私たちは苦境に陥っています」と3人の子どもと寝たきりの夫をもつナダ(Nada)さんが語ります。彼女は無職で、不法移住者と難民を区別しない当局によって身柄を拘束されるのを恐れています。「私はいつかイラクに安全が戻ってくる望みをまだ持っているから投票します。」

原文 : Refugees watch Iraqi elections with doubts and hopes
ソース : UNHCR News Stories
日付 : 2010年3月1日
日本語訳 : 佐藤奈美・志田佳奈子(国連UNHCR協会ボランティア)

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