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イラク及びイラク周辺国/織田靖子 緊急報告
2007年6月28日、UNHCR本部イラク担当をしている織田靖子(おだやすこ)が、休暇で東京に戻った際に、協会スタッフが話を聞きました。
イラク国内の避難民、その周辺国の難民は増えているのでしょうか?
イラク国内の避難民は200万人くらい。国内で少しでも安全な県に避難しようとする人が毎日何千人もいると予想されていますが、正確な数は危険地帯のため確認が難しい状況です。最近では、避難民の数が増えすぎこれ以上耐えられないと県当局が判断して県境を封鎖し、避難民が移動できないようになってきています。この状況下で、避難民の中で国境を越えることの出来る人は周辺国に避難しています。イラク周辺に難民化した人々が約200万人はいると見積もられています。特にシリアとヨルダンに集中しています。水資源のないヨルダンではヨルダン人の飲み水も足りないため、増え続けるイラク避難民の数に耐え切れなくなって、最近国境を閉じてしまいました。シリアでは、すでに100万人受け入れている上に、毎日イラク避難民が入国する状況が続いているようです。
イラク国内でUNHCRはどのような援助活動をしているのでしょうか?
現地スタッフを中心に、アンマンとクウェートから遠隔で緊急援助とコミュニティー援助をしています。イラク北部には国際スタッフ2名が駐在しています。北部のエルビルとモスルでは、UNHCRの援助実施団体として「ピースウィンズ・ジャパン」ががんばっていて、日本スタッフも1名現地に入っています。
非常に危険な現場なので計画通りに行かないものの、最低限、毛布、マットレス、ポリタンクなどの配給を続けています。人の生死に関わるのでこれらの緊急援助は非常に大切なのです。そして、少しでも安全な村や町では、学校や住宅の整備なども実施しています。
大掛かりな活動ではありませんが、UNHCRはイラク国中各県に最低一箇所の保護支援センター(Protection Aid Center)を設置しています。そこにはパスポート、IDカード、土地所有権の問題、年金の問題などいろいろな相談に乗れるスタッフを配置し、イラク人の将来への不安材料をなるべく減らすようにしています。
では、周辺国ではどのような援助活動をしているのでしょうか?
例えば、一番多く難民を受け入れているシリアでは、その国の政府と連携してイラク避難民の集中している首都ダマスカスの郊外で学校を建設しています。都市の物価なので、学校の建物と設備を入れて最低一校200,000ドル(約2400万円)程かかります。子ども達に文房具を配れるときには配っています。保健省と一緒に、病院の拡張、医療機材の寄附、医療費の補助もしています。この一部は2007年3月の日本政府からの緊急援助資金で実現し、順調に活動が続いています。直接イラク人を援助するだけでなく、イラク人を大量に受け入れている周辺国の政府や受け入れ先の住民の方々の負担を軽減することが大切なのです。
支援に必要な資金状況はいかがでしょうか?
UNHCRが2007年1月に出した資金アピール6000万ドルは、おもに各国政府からの資金で100%集まりました。ただし、イラクと周辺国の実態に合った支援をするため、また問題の根本に対処して行くには、莫大な費用が必要となります。もちろん経済社会開発の課題も多く、UNHCRだけで対応できません。その中でのUNHCRの役割として、紛争を逃れた避難民に緊急援助と最低限の医療・教育を与えるために、年間約1億ドル以上必要と見積もっています。ただ、今の状況がさらに悪化すればどうなるかわからない面もあります。
とくに弱い立場にある女性や子どもに対しては、どのような援助をしているのでしょうか?
2003年の戦争とその後の内戦のような状態の影響で、イラク人には未亡人と孤児の比率が非常に高いのです。そのような方々に対しては、特別に医療費の補助、物の配給、生活保護費を出しています。また、1990年代の戦争の影響で、小児癌の率が非常に高いと言われています。まだ科学的な証明はできていませんが、小児がんの多さはUNHCRの医療関係の資料で明らかとなっています。癌の場合、医療費が膨大なため補助しきれないのが現状ですが、子供と家族に対する心のケアを強化しています。シリア女性協会などと連携して、今後さらにどのように効果的な援助が出来るか検討中です。
織田さんが、イラクや周辺国に行ったことはありますか?
イラクでは1991年にWFPで数ヶ月働きました。その後、残念ながらイラク国内に入る機会はありません。周辺国シリアとヨルダンには、今年1月に長い出張として1ヶ月間、現地事務所の応援に行きました。
織田さんは、UNHCR職員としてザンビア、モザンビーク、エチオピア、モンテネグロで難民支援に従事されて来ましたが、そんな体験から、現在のイラク支援をどのように感じていらっしゃいますか?
あまり知られていないのですが、イラクは2006年になってから紛争の質が変わり、民族間の内部紛争のようになってしまったことが非常に心配です。その結果、特に一般の市民の方々が命を狙われたりして被害が多くなりました。私の友人や同僚である普通の市民の方の話では、テロに殺された兄弟の死体を引き取るのに3万ドルを支払うという恐ろしい事態が起きています。失業率の高いイラクでは莫大なお金です。払えない人がほとんどだと思います。
日本の皆さんへのメッセージをお願いいたします。
イラクも含めて中東は長い歴史と文化を持った国々です。日本人は第二次大戦後復興を果たした立派な国だと好感を持つイラク人も多くいるように個人的に感じることがよくあります。残念ながら、イラクが平和になるにはかなり時間がかかるように思います。もしも明日平和になっても、すぐに何百万人もの避難民がみな家に帰れる日はすぐには来ないかもしれません。日本人が長い目でイラク難民問題に関わってゆき、援助を続けてくだされば、イラク人そしてシリア、ヨルダンの方々の励みになると思います。
経歴 : 兵庫県出身。関西学院大学法学部卒業。青年海外協力隊員としてマラウイ勤務、WFPでイラク勤務の後、英国に留学し、開発学(Development studies)で修士号を取得。1992年にUNHCR職員となり、ザンビア、モザンビーク、エチオピア、モンテネグロを経て、現在はジュネーブ本部勤務。









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