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洪水の被害を乗り越え、タイで続く援助活動
過去50年間で最大の被害をもたらしたタイの洪水により、500名以上の人々が命を落とし、300万人近くの人々が被災しました。その中で、UNHCRは同国に避難する約15万人の難民と庇護申請者に対する援助活動を続けています。
バンコクで働くUNHCR職員68名のうちの4分の1にあたる17名(タイ人および外国人職員)は自宅から避難せざるを得ず、残りの職員も数日のうちに避難が必要な状況にあります。
「私の仕事は大変重要です。仕事がストップすれば、難民は第三国定住での新しい生活を始める機会を失うことになってしまいます」と話すのは、3週間前に自宅から救助されたクハジェーパン・クラワン(Khajeepan Kruawan)UNHCR職員です。「ですから、私にはオフィスに来る義務があるんです」と続けました。第三国定住プログラムのアシスタントである彼女は難民のためにタイ出国許可証の申請書類を準備しており、これを自宅で行うことは不可能です。
タイとミャンマー国境沿いにある9つの難民キャンプに暮らす、未登録者を含めた14万8000人のミャンマー難民は、洪水の被害をほぼ免れました。しかし、44カ国からバンコクに逃れてきた2000人の難民と庇護申請者については同じというわけにはいきません。多くの援助活動が中断し、26名が住居を離れるか同じ建物内の上階への移動を迫られています。さらに多くの難民がいまだに洪水の脅威にさらされています。
例年になく勢力の強いモンスーンがもたらした豪雨により膨大な量の水がバンコクへ押し流され、この数週間で各地が次々と浸水しています。UNHCRは5万米ドルをタイ首相府の救済基金へ寄付し、洪水のために避難しているタイの人々に太陽光発電ランプを支給する予定です。
バンコクに滞在する多くの難民は、無料の医療サービスや非正規の教育サービス、少規模ではありますが食糧配給を近くの施設で受けていましたが、今ではそこにもボートで向かわなくてはなりません。UNHCRは、難民の急場しのぎのために現金で給付金を支給しています。
「私たちは重要なメッセージを難民の母国語に翻訳しています。特に洪水により危険性が増す生物媒介の病気や怪我を防ぐためです」とHIV/AIDS担当のハーブ・アイサムバート(Herve Isambert)現地シニアコーディネーターは言います。
「また、エイズや糖尿病、結核などの慢性疾患に必要な薬を欠かさないように、またこの大変な状況下でも忘れずに服用しているか確認するようにしています」。医師でもあるアイサムバート現地シニアコーディネーターは、「再びすべてを失ったことに対するトラウマから立ち直れるよう、洪水が収まった後には彼らにカウンセリングを行うことも必要となるでしょう」と述べました。
UNHCRのスタッフは、自分たちが家から避難を強いられたことで、普段援助をしている相手が、住み慣れた環境や友人、家族から切り離された時にどう感じるかを新たに認識したと話します。「災害に対する準備が十分にあり、必需品や四輪駆動車を持った私ですらこの状況は非常に困難だと感じます」と、チュラパット・ジラユット(Chulapat Jirayut)ITアシスタントは語りました。彼は滞在先を2回も変えなければならず、さらに18カ月の息子を自分の両親と共にバンコク外へ避難させました。
しかし、そのような状況にいても他者に思いを至らせ、次のように言いました。「庇護申請者や難民たちは何も持っていないのですよ。持つことができるのは2個の鞄だけで、時には食糧すらほとんど持っていません。しかし、重要なのは物質的な側面よりも心理的な状況です。」
10月17日の早朝、クハジェーパン第三国定住プログラムのアシスタントの自宅が浸水した際、セキュリティ管理を行うチュラパットITアシスタントは、彼女からのSOSを受け取りました。彼女は6年前に交通事故に遭い、脊髄を損傷したため歩行が困難です。そのため、車椅子や時には歩行補助器を使用して働いていますが、迫りくる洪水に対してはなす術がないことを知っていました。「洪水を見たとき、生き残れるとは思いませんでした。」
チュラパットITアシスタントは上司のグレイ・クリスチャンセン(Gry Kristiansen)UNHCR職員とともに車で彼女の救助に向かいました。「増水の速度は恐ろしいばかりでした。車から降りて彼女の家に向かった時、水は膝まで達していました。2時間半後に再び戻った時には胸元まで増水し、水流は信じられないほど激しくなっていました」とクリスチャンセンは語りました。
クハジェーパン第三国定住プログラムのアシスタントは、同僚が彼女の身の安全を心配しているとは想像もしていませんでした。「彼らはあの濁流の中、命を懸けて来てくれたのです。そのことが私に生き延びる希望を与えてくれました」チュラパットITアシスタントが彼女を運ぶと申し出たのですが、彼女は杖を掴み、3人は避難を始めました。幸運にも、クリスチャンセンUNHCR職員が大きな発泡スチロールのいかだを発見し、それに彼女を乗せて、駐車していた車へ運ぶことができました。
現在、バンコクのホテルに滞在している彼女はこう言います。「私は自分の仕事に誇りを持っています。第三国定住プログラムは難民たちに新たに人生を始める機会を与えるものだからです。」
原文 : Thailand’s epic floods no barrier to service
ソース : News Stories
日付 : 2011年11月9日
日本語訳 : 北川玲貴、安部健二郎(国連UNHCR協会ボランティア)
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