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Q&A:スリランカ北部 紛争終結後も残る課題

ヴィッキー・テナントUNHCR上級政策担当官UNHCRは北部スリランカの国内避難民を対象とした帰還・生活再建のための支給金制度を実施しており、さきごろ、その効果を検証した報告書をUNHCRとスイス開発協力庁(Swiss Agency for Development and Corporation)が発表しました。スリランカ政府軍と反政府勢力のタミール・イーラム解放の虎(LTTE)の長年の戦闘が2009年初めに最終局面を迎え、28万人以上もの人々が避難を余儀なくされました。紛争終結により避難民のほとんどは、スリランカ政府が人道支援機関の協力を得て運営する避難民キャンプに収容され、2009年のおわりから徐々に避難民の帰還が始まっています。報告書を執筆した一人であるヴィッキー・テナント(Vicky Tennant)UNHCR上級政策担当官から、2010年はじめにスリランカ北部を訪問した際のこと、また、資金不足により支給金制度の中止が先日決定されたことによる影響について話を聞きました。その一部をご紹介します。


スイス開発協力庁と行ったスリランカでの合同ミッションの目的は何だったのでしょうか。

UNHCRが行っていたシェルター支援プログラムを評価するためです。プログラムの影響、また、実際に帰還した人々の生活再建に役立っているかどうかに注目しました。基本的に、支援対象者はほとんどが北部スリランカでの紛争の最終段階で避難した人々で、25万人を超えます。紛争の間は非常に過酷な経験をし、また多くは帰還が許されるまでに数ヶ月間を閉鎖的な避難民キャンプで過ごしています。


支給金制度についてご説明ください。

支給金制度は、帰還する一家族ごとに2万5000スリランカルピー(約220USドル)を支給するものです。ふるさとに戻ると、まずスリランカ政府が5000ルピーを支給します。政府に対してはUNHCRが事後に支給分を出資します。帰還の数日後、UNHCRと政府により帰還民の登録作業が行われますが、その際に、セイロン銀行で口座を開き、残る2万ルピーをいつでも引き出せるようにできる申込用紙を発行します。
スリランカの銀行制度はよくできていて、銀行は紛争のさなかも、北部であっても機能していました。主要な帰還先地域であるワンニ(Vanni)にはセイロン銀行の支店が3ヵ所にあり、さらにセイロン銀行は帰還民が到着している村へ移動チームを派遣しています。これは効果的に機能しているようでした。
支給金は、住居の再建や必要な修理、また必要であればシェルターの建設に対する支援を目的としています。実感したことですが、支給金のメリットは融通が利くことで、支給対象者がそれぞれ優先したいことを自分で決められる点にあります。また帰還プロセスに参画して帰還民の状況をモニターできるので、UNHCRにとっても有益です。UNHCRでは長年にわたり今回のような大規模な帰還プロセスに支給金制度を適用していますが、受益者が必要とする支援を届ける方法として実際に効果的であるとわかりました。
ミッションから戻り、資金不足により支給金制度を中止すると聞いた際には、本当に残念でした。帰還民が支給金をとても有益に活用していて、到着後の数週間に大きな違いが出ることを現地で見たのです。


支給金はどのように使われていましたか。

支給金はシェルターを含め幅広く利用されていました。ある男性から話を聞きましたが、その人は土地を整備する道具を買って、畑の植え付けが再開できたそうです。また、支給金の一部で野菜を買った人や、子供のための衣服を買った人もいました。
多かったのは自転車を買ったという意見でした。たとえば、若い人が仕事を探しに近くの町に行くため、あるいは市場で食料を買うために使えます。子どもを学校に連れて行く際に使う人もいます。聞いたなかではおそらく自転車がもっとも多い使途だったように思います。公共交通機関はまだとても機能しているとは言えませんから。


スリランカのどの地域をを視察しましたか。

コロンボを訪問した後に、ヴァヴニヤに向かいました。最後の紛争地となった北部のワンニで、帰還地を数ヶ所訪問しました。昨年、避難の動きが最終段階に入ったころ、ワンニには誰もいなくなってしまいました。前線が動くにつれ人も動いたのです。もぬけの殻となり驚くべき事態となりました。帰還民は一から始めなければなりません。ワンニで帰還民と数日過ごしたのち、西のマナーへ、さらに帰還民の半分以上が向かったジャフナへと移動しました。


破壊の規模は大きかった模様ですか。

ほとんどの場合、家屋は完全に、あるいは激しく破壊されていました。ワンニでは帰還が速く進んでおり、避難していた人々の半分以上がすでに戻りました。しかしながら、まだ地雷が除去されていない地域もあります。


帰還民が一番必要とするものは何でしょうか。

生計をたてる手段です。再び家族を養えるよう、稼がなくてはなりません。つまり畑を再び耕作できる状態にしたり、近隣の町で仕事を見つけたりしなくてはなりません。女性が一家を支えている場合は、何がしかの収入、生計の手段を得ることがとても大切になります。漁師は漁船と網を必要としていました。また、現地では教育の話も頻繁に聞きました。子どもたちは勉強に大変熱心でしたし、帰還地ではたくさんの学校が授業を再開していました。非常に印象的でした。


全体的にどんな雰囲気でしたか。

基本的には、過去1年半で、紛争の真っ只中から閉鎖的な避難民キャンプを経験した後なので、ふるさとに戻れてうれしいようでした。ですが今は帰還して楽観的になり、幸せを感じているとしても、すぐに不安と現実の心配ごとにとって代わられるのではないかと思います。
明るい兆しはたくさんあります。経済活動は再び活発になりつつあり、教育や衛生などの公共サービス提供に向けて政府も大きく投資しています。しかし避難民は一切を失ったのです。前線の移動にしたがって、持ち物一切を捨ててきました。UNHCRの食糧以外の支援物資などの人道援助はさておき、避難民は今また、何も一切持たず帰ってきたのです。220USドルは日雇い労働者の3か月分の収入にあたります。かなり大きな額に見えますが、避難民が一から生活を立て直すために必要なことがどれほどあるかを考えれば、大海の一滴に過ぎません。
また、避難民の多くは紛争中に家族を失い、あるいはまだ行方不明の親類がいます。深刻なトラウマを抱えていることはきっとお分かりかと思います。そのほかにも、戦闘への関与を疑われて更正キャンプに拘留されたままの、約1万1000人と言われている人々を家族に持つ人の不安も大きなものです。ですので、家族が再会を果たすまでは、帰還プロセスは成功とはいえない観があります。


スリランカ政府はどのような支援をしていますか。

政府は支援体系の組み立てと実施のため、人道支援機関と非常によく協力しているように思います。しかし、特に破壊された住居への対応や人々の生活手段確保など、すべきことはまだ多く残っています。今回訪問した地域では、UNHCRがとてもうまく地方政府と協力していました。


女性が家計を支えているケースについてお聞かせください。どう生活をしのいでいるのでしょう。

ほとんどは、戦争中に夫を亡くした女性です。また、夫がまだ更正キャンプにいる女性もいます。難題をたくさん抱えていると思います。たとえば女性一人で仮設住居を再建するのは難しいでしょう。お金で人手を借りなければなりません。こういった面にも人道支援機関の支援は注目していく必要があると考えます。
また、軍がまだまだ多く配備されていることからくる懸念もあります。


避難民キャンプにまだいる人々はどうでしょうか。

新しい避難民キャンプにはまだ約10万人が滞在しており、以前に比べて移動の自由が大幅に認められています。一回につき10日まで外出できる一時外出制度も導入され、大きな改善といえるでしょう。帰還できる地域がさらに増えれば、避難民のほとんどが帰還できるようになると期待しています。


支給金制度が3月はじめに中止されましたが、どのような影響がありましたか。

これから帰還する人々にとっては、すぐにでも必要となる物を確保することがとても大変になるでしょう。融通の利く支給金がもうないわけですから。以前に帰還した人々と違い、すぐに住居を建て直す木材を買ったり、人を雇って土壌を整備したりするわけにはいきません。また、私達も見ましたが、少額の投資をすることも以前のようにはできなくなります。大変残念な状況です。


今後の帰還にも影響が出るでしょうか。

一概には言えません。みなふるさとには戻りたいので、避難民の大部分はどうであれ帰還するでしょう。ですが、最も弱い立場にいる人々は帰還するまでに少々時間がかかることがあります。このような人々にとってみれば、支給金がもうないということは大きな違いでしょう。


原文 : Q&A: Northern Sri Lanka emerges from conflict but challenges remain
ソース : News Stories
日付 : 2010年4月7日
日本語訳 : 安部健二郎、北川玲貴(国連UNHCR協会ボランティア)

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